01 いざ 鎌倉
初投稿です
のんびり書き上げていく予定です。基本私の趣味で書いてます。
波長のあう方お読み下さい。
「つまり、私は巻き込まれたと?」
「そうなのだ。非常に珍しい例なのだが、地球人でも近くの魔法陣に極端に反応する者がいる。目的の者以外の者が転送されてしまう事があるのだ」
勇者召喚の儀式に巻き込まれ、否応無く誤転送されてしまい、神様らしき存在に事の顛末を説明される。
「で、私は今後どうなるのですか?」
「それよ問題は。通常はこの記憶を消して元の場所に戻すのだが、転移にはかなりのそなたの自己体力の消費も必要になる。事実この場所に転移された時はほぼ死人状態だったのだぞ」
かなりの危機状態だったらしい。それを神様の力で回復してくれたのだ。
強制召喚にはそれなりのリスクがあるとの事だ。通常はその為若く体力がある者が選ばれる。年配者や病人等はかなりのリスクがある事になる。
神にもそれぞれのテリトリーがあり、この異世界と地球では担当神が違う為に、例えこの地区の神が体力強化で転移にて地球に送っても地球の担当地区に入ると強化は消滅してしまう為に、ほぼ効果は期待できないとの事。
「済まぬが2つの道がある。無理を承知で地球に転移するか、こちらの世界で余生を過ごすかの2つだ」
「・・・ちなみにこの私の余生はどのくらい残っていますか?」
「本来は答えるわけにはいかぬのだが、今回は判断材料の一つとして特別に教えよう。まるまる30年寿命が残されている。どうする?」
「おっ! 100まで生きよう だな!!」
「ふむ?」
「いやいや、急に失礼しました。私の念願通りです」
テンションが急に上がったのには理由がある。幼い頃見たあるテレビ番組の主題歌が妙に耳触りが良く、すっと私の頭に入り込み、以来事ある事に歌の歌詞が頭に浮かび出る状態になっていた。
人生で苦しい時、悲しい時、楽しい時、何かの節目時に頭に浮かぶ歌詞にどれだけ励まされた事だろうか。
いつしか何が何でも100歳まで生きてやると、そんな無謀?にも似た思いでこの70歳まで生き延びてきたのだ。
それが思わぬ事で可能で有ると分かった事により、テンションが爆上げになってしまったのだ。
不確実な地球への転移より、新天地での余生を楽しもうと即座に決定し神に申し入れを行う。
ただ問題は体力である。歳相応に衰えが見えてきた現状、余生を楽しむだけの最低の体力底上げは欲しい。
それに聞くところによると恐ろしい魔物まで住んでいるとの事。
今更武道等の習得も困難であろうし、是非その点のご助力をお願いする。
「了解した。体力の底上げと武器に関しては一つ心当たりがあるので、それを持たせよう。他に何が希望は?出来る限りは協力するぞ」
異世界での生活に必要なスキルを話し合い、いざ鎌倉と魔法陣の光が私の体を優しく包み始めた時、部屋に誰かが入ってきた気配を感じた。
「ただいま、ヘパフラスコ様。遅くなりました。あっ、何をしているのですか! 私が帰るまで状況説明だけをお願いしましたよね!? それを… 」
後は聞き取れなかった。私は光の渦の中で気を失っていた。
目が覚めた・・・・
ゆっくりと上半身を起こして一言。
「ここは何処? 私は誰?」
いや、後半はうそだ。 自分の名は流石に忘れてはいない。
そして此処が神様との約束の地、異世界であるとうすうすとは認識している。
ただ現在地が全く不明であると言う事だ。
そうか異世界か・・・ 夢のような本当の話しなんだな・・・
さてと、ゆっくりと周りの状況の確認作業に移る。
まずは前方と右側は森だ。それも特に前方は昼でも陽の光が遮られて、かなり暗く感じる。昼なお暗き森がどこまでも続く感じだ。
後方を見ると木々の隙間から薄っすらと溢れ日が差し込んでいる。前方に比べ明るく感じるのは、後方約50メ-トルくらいに絶壁の岩山が壁のごとく、垂直にほぼそびえ立っているのが見えるからだ。
高さにして200メ-トル程であろうか。うん、登るのは私では絶対に無理だと思う。この岩山は見える範囲どこまで続いているのか確認不可な状態だ。プロのロッククライマ-が喜びそうな地形だ。
最後に左側だが、約100メ-トルほど先からかなり明るい日差しが森の中に差し込んでいる。おそらくそこで森が終わり、草原かな? 草が風に吹かれてなびいている様子が見える。
さて、いつまでもこの場所に座っていてもしかたない。どの方角に進むべきか再度周りを確認すると立ち上がるべく膝に置いた手を一瞥する。
あん? なんだこの手は!?
別に腕が3本に増えたとか、手の指が6本になったとかではない。
見慣れている指ではないのである。
手の皺が消えている!?
私は今年で70歳の誕生日を迎える。
体力の限界を少しでも延ばすべく、日々ウォ-キングやジョギングで汗を流している毎日ではあるが、筋力は増やせても皮膚の老化は防げない。
年それなりに老け込むのは世の常である。かくして私も皺とのお付き合いの毎日ではあった。
その皺が綺麗さっぱりと消えている。いや手だけではない。顔も、足も、お腹も…
つまり全身若返ったと………!?
混乱する脳内を必死に押さえつけ、神様との会話を思い出す。
あの時に確かに、この異世界で暮らす為の体力は保証するとの嬉しい約束があった。それが若返りに継ったのかな?
だとすれば非常に嬉しい誤算である。当の本人はそこまで望んでいなかった。
単に異世界で暮らす為の最低体力の底上げとしか考えていなかったのである。
起き上がり改めて自分をじっくり眺めてみた。
全身が軽い。まるで10代に戻った気がする。これなら多少無理をしても翌日に疲れが残ることがないかな?
改めて神様に感謝感謝!!
はて? あの神様のお名前は……(汗)
重大な事に気がついた。私は昔から人の名前を覚えるのが不得意なのだ。
社会人時代も四苦八苦しながら対応していたのを思い出す。
そもそも自分の名さえ、さほど興味を持っていなかった。
いつからか人の名はたんなる符号、と割り切って生活習慣化?していた。
流石に神様のお名前を忘れるのは…世間ではこれを不遜と非難されるよな(汗汗)
申し訳ありません神様。お名前を思い出しましたら再度お礼申し上げます。
言い訳がましいですが、確か西洋風?のお名前と記憶しています。其のことが余計にアチラ風の文化に興味のない私には… つまり… 誠に申し訳ない!!!
さて気分を一新して?次に服装に目を移すとするか。
はっきり言ってどこの骨董店から仕入れてきたのか、センスは最悪。特に着心地はゴワゴワ感が強く現代の日本での服装になれた人では… ただ私が生まれた当時、昭和20年代の後半ではこれはアリかな? あの当時は日本中がまだまだ貧しく栄養も物資も不足していた時代だからね。
ふむ、身長はさほど変わっていないように感じられる。約180位だな。目線の高さも前と違和感がないな。
気になる顔の造形は手で触ってみた感じは前よりはまともに?なっているようだ。
今度水場があればじっくり確認して見ましょう。
では異世界での第一歩を刻むとするか。
私はゆっくりと異世界の大地を確認しながら、方向を左手側に変え歩みを開始した。そう、草原方向が私の当面の目標設定と決めたのだ。
何故に草原方向?だって人は薄暗い森より明るい日差しを欲するのは当然でしょう?それに此処は異世界だよ。定番の魔物達との遭遇戦など考えたくもない。
えっ? それでも明るい草原より薄暗い森が好きだって? 本当に?
そう……それは失礼した。
おう、もう少しで森林の終点だ。気も軽く、心も軽い。
何となく体の若さに精神まで引っ張られている様な気がする。
あれ? 少し待ってくれ。何か重大な確認事項を忘れているような……。
まぁいいか。そのうちに思い出すだろう。早く全身に明るい陽の光を存分に浴びたい。今の私はその思いに脳内が満ち溢れていた。
拙い私の文面の小説を評価して頂き、誠に有難うございます。