それ……
この作品はフィクションです。
けっして真似はのんのんですよ
これは私が小学五年生の頃のお話です。
「あっくん。本当に行くの?」
「当り前だぜ。何だビビっているのか、山本」
「ビビってないよ。ただ危ないかなって」
この日私は親友のあっくんと山本の三人で、私たちが通う小学校の旧校舎に忍び込む約束をしていました。
何でも旧校舎にある小さなお堂の側に行くと、この世のものではない何かが襲ってくるという事でした。
噂では昔かくれんぼをしていた子供が、焼却炉の中に隠れてそのまま死んでしまい。子供を供養するために建てられたお堂だとか……。
時刻は二十二時。辺りは住宅街のため静かで、そういうものを信じていない私でも少し怖くなってきました。
「あっくん。何処から入るの?」
「正門をり越えた直ぐにある窓の鍵を開けといたから、そこから旧校舎まで行こうぜ」
あっくんは軽々門を越えたので、私がその後に続き最後に山本がなんとか乗り越えるのを見届け中に進みます。
私達はあっくんを先頭に、学校に忍び込みに成功しました。
「簡単に入れたね」
「先生に見つからないかな?」
「山本はビビりすぎだって」
あっくんは笑いながら廊下を進み、旧校舎に続く渡り廊下に入っていきました。
渡り廊下はどこか黴臭く、私達は各々持参した懐中電灯の明かりを頼りに奥へと進んでいきます。
ギシギシっと木の床が軋み、旧校舎の中はいっそう軋みが激しいように感じました。
「この音、怖い」
いちいち怖がる山本の声を無視しながら、奥まで行くと鎖で巻かれたドアが見えてきます。
「どうするの? あっくん?」
このまま帰るのかなって思って、そう聞きました。
「任せろ。とーーりゃーー!!」
あっくんは勢いをつけて、ドアをけ破りました。
ガシャン! と大きな音が響きます。
「あっくん。ばれたらどうするんだよ?」
山本が少しいいことを言いました。
「大丈夫だろ? 早く行こうぜ」
あっくんはへらへらと進んでいきます。
扉から出てすぐに小さなお堂はあり経年劣化からか、少し塗装が剥げて苔が生えてました。
「何もいないね?」
「そりゃあ? お化けなんていないし」
山本が強がります
「何だよ。つまんないな」
あっくんがぼやきながらお堂を蹴りました。
「もう、流石にやりすぎだよ~」
私は笑ってそう言います。
「帰って、対戦ゲームオンラインでやろうぜ」
「うん、そうしよう。あっくん」
山本は早く帰りたいのか、いつも負けていやがる対戦ゲームに乗っかりました。
そのまま来た道を戻っていると――
ヒタ、ヒタ。ヒタっと木が軋む音に交じって、何かの物音がしてきました。
それにいち早く気が付いた山本が、立ち止まって振り返ります。
すると――
ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタヒタっと音が激しくなり私とあっくんも立ち止まって、振り返りました。
暗闇からそれとしか言いようがない黒い何かが、迫ってきます。
「「「わーーー」」」
流石にあっくんも私も悲鳴を上げて、廊下を走りました。
何も気にせず、ただ夢中で家まで走りました。
気がついたら、山本もあっくんも姿が見えなかったのです。
ただ走っている最中に耳元で聞えた「もういいかい……」という声が私に恐怖を与えていました。
私は家に帰ってすぐに自分の部屋に入って、お気に入りの音楽を聴いて気分を変えようと努めます。
お母さんが、何か言っていた気がしましたが今は小言を聞きたくありませんでした。
・・・・・・・・・・・・
いつの間にか眠ってしまったらしく、机に突っ伏した状態で目が覚めました。
時計が七時半を指しているのが目に入り、慌てて支度をして学校に行きます。
案の定、学校に行くと昨日誰かが、学校に忍び込んだという話を担任の武田先生はしていました。
ただ、あっくんと山本はまだ来ていないようだ
私は表情を変えずに聞き、出席を取られるまで真面目な生徒を演じました。
出席を取っている最中に違和感を覚えて、「え?」と小さな声を漏らしてしまいます。
今、あっくん呼ばれなかった? 気のせいかな? でも今も山本も呼んでなかったような……。
「あの、先生」
私は意を決して、手を上げました。
「どうした?」
「阿久津君と山本君を呼び忘れてますよ?」
「姫さんが寝ぼけているなんて珍しいな。そんな生徒このクラスにはいないぞ?」
わたはその言葉に背中に冷たいものを感じました。
これは後から知ったことなのですが、あの時聞えた「もういいかい」という声に返事をしてしまうと、焼却炉でなくなった幽霊と終わらないかくれんぼをさせられるそうです。




