飾られた話
天空が蒼く澄んだ下の王国
黄金を抱き、生まれ出でた赤ん坊
母とも父とも違う金色の髪
その赤ん坊は生まれながらにして
黄金以上の価値のある者
しかし美しき髪の代償と言わんばかりか
その娘の目は黒く濁っていた
白くきめこまかな肌、誰もが美しいと言う
当たり前、日を浴びずに生かされた
しなやかな肢体、誰もが美しいと言う
当たり前、裕福な暮らしだもの
私は人形国民に愛された人形
ここでは私は愛らしい姫君
誰もに愛される…
そんなもの捨ててしまいたい
外見だけで皆、私を理解する
知ったような顔しないで
誰も私の瞳を見てはくれない…
きらびやかなドレス、誰もが美しいと言う
当たり前、国が豊かだから
シルクのような髪、誰もが美しいと言う
当たり前、侍女が手入れをするもの
私は人形国を飾る人形
ここでは私は美しい姫君
誰もが人として見てくれない
誰もいい、美しい瞳で私を見て
美しい、美しい
そんな言葉が欲しいわけじゃない
誰も私の瞳を見てはくれない…
「美しい、髪ですね」
それは私の心を抉る言葉
貴方は平気でそれを口にする
綺麗な金色の瞳で私の金色の髪だけを見るだけで…
お願い私の瞳を見て…?
彼の瞳へ、私はそっと手を伸ばした…
━━姫様が…隣国の使者の両目を…何故こんなことを…和平の取り消し……戦争が…あの女は魔女だ!━━
噂は尾ひれを増し、真実味を帯びる
当たり前、だって火のないところに煙りは立たない
魔女は火炙り、王(父)と王妃(母)は庇いもしない
当たり前、全ては私のせいだから
私は人形捨てられる人形
ここで私はやっと手に入れた
私だけを見てくれる金色の瞳を
彼女の瓶の中には赤い丸いものが二つ
この金色の瞳があれば
もうどうなってもいい
やっと皆の顔色(瞳)を見なくてすむのね!
焼却炉に入れられた人形は
美しい金色を、赤い炎と共に舞わせ
黒い糸(意図)を紡ぐだろう
この話は王国が滅びる少し前の話…