『エピローグ=プロローグ』
幼馴染に刺された日は、結構大変だった。(文字にすると、字面のインパクトがやばい!)
知らない間に俺の失踪事件が起きていたみたいだ。
千里さんなんかは、朝8時頃、泣きながら千鶴さんに電話をかけてきたそうだ。
千鶴さんに連絡する前にも、4時間近くにわたって俺を探してくれていたらしい。妹のももちゃんも捜索に、駆り出されたそうで、
「私は、どうせどこかに出掛けただけだって言ったのに、お姉ってば、めちゃくちゃ慌てちゃって健太郎く~ん、って汗をかいて家の周りの近所を探し周っていたんだよ?お姉ちゃんの彼氏さんには、お姉の動画を撮っておいたから後で見せてあげるね。我が姉ながら、涙目で汗をかきながら心細そうに探す姿はすっごーーくかわいかったんだよ!?」
と、一週間後に千里さんの家にお邪魔した際に、ももちゃんが言っていた。
それを聞いていた千里さんは、ももちゃんをどこかへ連れていってしまった。
遠くから、「なにすんの?おねえ。お姉の泣きそうになる可愛い姿が消えちゃうよ~。結婚式で流す予定が~」ってももちゃんが叫ぶ声が聞こえてきていた。その後は例のごとく、耳に手の跡がついたももちゃんが戻ってきた。
探している時にも、そんな感じで、ももちゃんに、からかわれたらしい。だが、その内容は千里さんは教えてくれなかった。
「なんてからかわれたんですか?」
って聞いたら、千里さんは青筋たてながら、
「う~ん、勝手に消えて、連絡もせずに、可愛い幼馴染と、私の大親友の美少女と一緒にいた健太郎君には教えないかな~。」
って笑顔で言ってきた。偶にしか怒らない千里さんも流石に今回ばかりは怒ってしまったようだ。怖くてそれ以上は聞けなかった。あと、笑顔が怖かったです。
当日は、手術がおきたばかりだったし、凛のことを秘密にする以上、千里さんと会うことはできなかった。
朝、千鶴さんに連絡があった時も、千鶴さんは、俺が凛に刺されて、緊急オペをした、とは言わないでくれたようだ。
…ここまでだったらありがたいんだけど、あろうことか、「童貞君のこと?そういえば、今朝、私のところに夜這いしてきたよー。千里の家にせっかく、泊まったのに、千里が満足させてくれなかったみたいだねぇ。千里の代わりに私が満足するプレイをしてあげたよ。」とか言いやがったのだ。
しかも、そこですぐに通話が切れたようだ。千鶴さん曰く、勝手に千里さんが電話を切ることは初めてらしい。…そりゃ、朝から探していた奴が、女のところに遊びに行っていたって言ったら、誰でも切れるだろ。
あの女なんてことしてくれとんのじゃぁぁぁ!そりゃ、一週間たった後も、千里さんは、きれているわ。そりゃ、当然だよ!
なんで、そんなこと言っちゃうの?しかも、その時って、凛も隣にいたんだよね?よく言えたな!また、刺されたらどうしてくれるんじゃ!
そして、俺の母親には、凛が連絡したらしい。千里さんの家に泊まるとももちゃんが連絡していてくれたおかげで、母親はそこまで俺のことを心配していなかったようだ。
凛はその時に、正直に「私が刺しました。」って言おうとしたらしいけど、千鶴さんが止めてくれたらしい。
色々なことに寛容なうちの母親も、一人息子が刺されたってなったら心中穏やかとはいかないだろう。 千鶴さんが、止めてくれてホントによかった!
これで、母親が俺と凛とを引き離すことはなくなったと思う。
後は、凛次第だ。正直、俺を好きでいてくれる人に「付き合えないけれど、一緒にいてほしい」っていうのは残酷なことだと思う。だから、あまり強く一緒にいてほしいとは言えなかった。
凛は、『夏休みのうちにどうするかを、考えさせてほしい』と言っていた。どんな結末になろうと、俺は凛の選択を尊重しようと思う。
そして、俺は、凛をみて一つだけ決意したことがある。
千里さんに告白しようと思う。
人の気持ちはきっと、言葉にしなければ伝わらないのだ。凛をみて俺はそれを実感した。
世の中のコミュ強ですら、ほとんどの人が告白をして、付き合うという形になるのだ。自然と分かりあって、いつの間にか付き合ったり、男女の関係になったりすることはまれだ。
コミュ障の俺はなおのこと、言葉にしなければ伝わらないと感じている。はっきり、伝えなければ、今回の凛と俺みたいに解釈の違いが起こってしまう。
だから、告白をしようと思った。
そして、俺は、夏休みの最終日告白をした。
「千里さん、付き合ってください。」
シンプルな勘違いの起きないような告白をした。
「う~ん、ありがとう。そう言ってもらえてうれしいよ。でも、少しだけ考えさせて。」
顔を少し赤らめながら、天使は、微笑んでくれた。俺は、顔を赤らめてはにかんでくれたことに少しだけいい返事がもらえるのを期待した。
「はい、いつまでも待ちます。」
俺は、期待をちょびっとだけ込めて返事をした。
千里さんの返事を待っている間は、千里さんとの映画デートや、食事デートとかを妄想したりしてドキドキして楽しかった。 手を繋ぐのは、いつからがいいのかな?とか考えたりもした。
そして、2日後、千里さんからラインがきた。
俺は、緊張と期待に震える手でラインを開いた。
千里:ごめん、付き合えない。それと、急だけど、学校の勉強が忙しくなったから、家庭教師はやめさせてもらいます。途中で辞めることになっちゃってごめんなさい。ただ、後任は私よりも優秀な千鶴ちゃんに任せたから安心してください。しっかり、千鶴ちゃんに教えてもらってください。今までありがとう。短い間だけど楽しかったです。
その無味無臭の冷たいメッセージと共に、千里さんは俺の前から姿を消した。
第二章からは、一週間に1回ほどの投稿でいかせてくださ。よろしくお願いします(_ _)
(当初は三日に一回のつもりでしたがすみません…)




