40 『ヤンデレを治す方法=信頼』
短めです。
くそったれ!痛ぇじゃねーか。
それでも、我慢しろ、俺。凛の心の痛みはこんなもんじゃねーぞ⁉
千里さんに恋をした今なら、九年もの間、恋心を抱き続けて、その焦がれる相手が隣にいる気持ちがわかる。
そんなのはひどすぎるよな。中途半端に希望を見せられる生殺しだ。
辛すぎる。
しかも、俺が勘違いを誘ってしまった。期待しちゃっても無理はない行動をしてしまった。
その痛みに比べたら、こんな痛みなんて屁でもねー⁉
心の中で強がるけれど、刺されたところは焼けるように熱を持っている。
「バカじゃないの?なんで、刺されたの?何でよけないの?よけれたでしょ⁉」
凛は自分で刺したにもかかわらず青ざめた顔をしている。
よかった。自分の行動が間違っているって、凛はまだ気づけるんだ。だったら、大丈夫だよな。
ばたん
そう思って安心したら、力が抜けて倒れてしまった。
俺はそこで、意識を手放した。
*
「童貞君、おはよー。」
千鶴さんが明るく声をかけてくれる。
「凛は?」
「ふふふ。加害者の心配とは、吞気なもんですねー。大丈夫だよ。健太郎君に言われた通り、警察に突き出したりはしていないから。パパとママにも秘密にするように言ってあるから大丈夫、心配しないで。」
よかった。凛が俺のために、人生を棒に振らなくて。それと治療してくれたであろう千鶴さんの両親には頭が上がらない。
俺は、途中、千鶴さんに連絡をしていた。唯一、閃いた案は千鶴さんに連絡することだった。あのとき俺は、千鶴さんの家にある医療設備のことを、思い出していたのだ。
ぶちゃけ、時間が時間だったから千鶴さんが俺からの連絡に気付いてくれるかは、かけだった。むしろ、気付いてもらえないだろうな、って半ば諦めていた。
一応、ラインには、万が一にも刺されたら、俺を千鶴さんの家に内密に連れていって手当てをしてほしいと頼んでおいた。
包丁を自分で自分の腹に持っていったのも、別に、格好つけたわけではなくて、単純に重症にならない場所へと包丁を持っていったのだ。
まさか、千鶴さんの休憩時間の医学話が、こんなところで役立つとは。聞いておいてよかった。
俺の母親がいつか言ったように、“人間万事塞翁が馬”ってやつだな。
「ええーーーん。よかったよー。ごめん、ごめんなさい。」
考え事をしていると、凛が泣きながらやってきた。
「凄い光景だね、加害者と被害者が同じ部屋にいるって。」
千鶴さんは苦笑しながらもこの光景を受け入れてくれていた。
イレギュラーな事態にもかかわらず寛容な心で接してくれる千鶴さんには感謝しかない。凛に対しても引いているような様子はない。中々の胆力だ。
「言っておくけど、ボッチ君、今日は安静にしなさいよね。」
「はい、わかっていますよ。ビッチちゃん。」
そこまで言ったあと、改めて、お礼を言う。
「色々、ありがとうございました、千鶴さん。それに、凛も泣くなよ。大丈夫だから、むしろ今まで気付いてやれなくてごめんな。」
「うん。私は大丈夫。」
隣では、俺の世界一の幼馴染は笑ってくれていた。
こうして、俺の、模試を含めた長い一日が終わった。
とりあえず、ここで第1章終了となります。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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