プロローグ 『告白=拷問』
高校三年の夏。
「けんたろーが私は好き。」
密室。二人きりの部屋で俺は幼馴染の凛から告白を受けていた。
豊満な胸にぱっちりした目がこちらを向いている。
クラスの大半が恋をしている女の子からのアイの告白。
バクバクバク
心臓が緊張から高鳴っている。
でも俺には最近勉強を教えてくれるようになった年上の家庭教師という好きな人がいた。
だから、
「と、とりあえず遊園地にでも行ってデートしようか。」
好きな人がいるにもかかわらず俺はそんなクズいことを言った。
最低な考えを持った、俺の挙動不審な言葉に凛は、
「だ~め。けんたろーはいくぢなしだから今答えてよ。」
そう言って、手に持っていた包丁を俺の首に突き付けてきた。
そう。
俺は何も可愛い女の子に告白されたから緊張しているのではない。
ヤンデレ化した幼馴染に刃物を突きつけられているから緊張しているのだ。
緊張からかいた手汗をズボンで拭ぐう。
(早くここを切り抜けて千里さんに会いにいかなければ)
「何を考えているのかな?かな?け・ん・た・ろ・う。もしかして、チサトさんのこととか考えているの?ぞっこんだったもんね。怒ったりしないから何を考えているか教えてくれるかな?」
こえー。こえーよ。怒ったりしていない奴はそんな聞き方しねーんだよ。
ヤバい、マジでしょんべんちびりそう。助けてマミー。
「な、何も考えていないよ。ましてや千里さんのことなんて、、、お前こそ、千里さんに嫉妬してんのかよ?」
「そんなことないよ。それに、別に、悩むくらいなら私の告白を断ってくれてもいいんだよ。」
「そうなのか?じゃあ、」
予想外の言葉にほんの少し安堵しかける。
しかし、凛は、恋する乙女の浮かべる満面の笑みで、俺の言葉を遮った。
「だって、愛するけんたろーと一緒の時に一緒の場所で死ぬっていうのも中々にロマンチックでステキだもんね。」
「それはつまり・・・」
「うん。けんたろーが告白を断ったら一緒に死のうね。こういうことするのは初めてだけど痛くしないから心配しなくても大丈夫だよ。」
大丈夫じゃねーよ。
成功しても死がまっていて、失敗したら苦痛の末の死がまっているだけだよ。
それに愛が重い。重いよ。一緒に死ぬのがロマンチックってどこの宗教だよ。三流宗教も真っ青な思想だよ。
高校三年生の夏。
俺は、告白と拷問の違いが分からなくなっていた。
結婚は人生の墓場(精神)である by ボードレール
告白は人生の墓場(物理)である by 健太郎
って、哲学している場合じゃねー。本当にどうすんのこれ?