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第36話 「闇」
窓ガラスの向こう側には、ただ漆黒の闇の世界が広がっていた。
ハンドルを握る男の手は緊張で汗をかいている。
進行方向をヘッドライトが照らしているが、光は闇に飲み込まれて何も見えない。
「完璧な闇だな。遠近感がまったくわからん!」
「もうすぐ、例の目撃場所だぞ」
「あ、あれを見ろ!」
助手席の男が前方を指差した。
闇の中にうっすらと真っ白な人型が浮かび上がった。
「ほ、本当にいやがった!」
「撮影するんだ。もっと近づけろ!」
「勘弁してくれよ!襲ってきたらどうするんだ」
「今さらビビるな!」
細長い白い人型は、揺ら揺らと不気味に揺れている。
二人はその人型に向かって近づいて行った。
「おい!どんどんヤツが大きくなってくるぞ!デカイぞ!」
「闇で距離感が狂っていたか!?」
男はハンドルを回して逃げようとしたが、白い人型は見る見る近寄ってきて、遂には窓ガラス一面真っ白になった。
ヒトガタと呼ばれる巨大な海洋生物は、洞窟のような口を開くと、その深海探査艇を一飲みにした。




