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第28話 「不老不死」
男は自分が突然変異による不老不死の人間だと気が付いた。
戦争で全身をバラバラに吹き飛ばされたのに元通りに再生したからだ。
以来男は自分が不老不死だと気づかれないように何世紀も生きてきた。
やがて地球では人類が住めなくなり、太陽系外惑星への播種計画が活発になり、男も移民船団のひとつに参加した。
男は不老不死だと気づかれないように何万年かの間移民船団を渡り歩き、新しい惑星系に辿り着いた。
その惑星系の資源を人類が食いつぶした頃、男が不老不死だとバレてしまった。
その頃には人類の外見がすっかり変異していたため、旧人類の姿のままの男は目立ったためだ。
男は深宇宙探査船に乗り込み逃げるように宇宙へと旅立った。
男は立ち寄った惑星に生命の種を蒔いてみたが、数億年後には惑星と共にすべて絶滅した。
結局、人類は銀河系を出ることさえできなかった。
ただ一人、不老不死の男を除いては。
男を乗せた宇宙船は当てもなく何百億年も何もない宇宙空間を飛び続け、やがて消滅した。
この広大な宇宙に存在するのは不老不死の男だけになった。
もはや時間も空間も意味を成さない無の世界で男は待ち続けた。
新しい宇宙が生まれるか、あるいは男が消滅する奇跡を。




