94 ダンス大会-2
青が濃さを増してゆき、星々が星辰をはっきりと描き出す頃、ダンスフロアには、憧れの偶像に上気した娘たちと若者たちの熱気が渦巻いていた。失神やいざこざを捌きながらダカーポを繰り返し約束のダンスが終わるとバンドリーダーがみんなにフロアーに上がる様にと合図を送り“私の人生を生きる”で躍らせた。
「ソシ中佐,素晴らしいバンドを紹介して頂きありがとうございます」
「いろいろを押し流して取り敢えず踊らしちゃえば何とかなったね」
「これが落ち着いたらいよいよ私たちの出番です」
「貴様の社研か」
「ハイ。選りすぐりの20組と各中隊の代表を招いて踊ります」
「そのドレスでか?」
「そうです。ちょっと地味に見えますが自分たちの手縫いです」
「お揃いなのか」
「基本、Aラインです。シンプルでクラシカルで上品で学生らしいでしょ」
「色も単色でフローも羽も石もついてないが」
「いいんです。代わりに布をたっぷりとって大きく広がるよう工夫してあります」
「貴様は誰と踊るんだ。」
「第1中隊のファイです。ちょとルイと因縁があるので釘を刺しておきます」
「他は?」
「第2のウエイズにはグレース、第4のコ―キンにはユニ、どちらも私のスタッフです。洪水作戦で顔見知りでもありますし。第5のベイシラはテヒに頼みました。同じ匂いがするんで」
「ベイシラか、成る程。重くなりがちな黒のドレスを淫靡にならずに軽やかに着こなせるテヒとのペアダンスは見ものだな。ところで貴様のドレスはオーカーと言うには輝きがあるな」
「レス、きづち色ですね。第3中隊の色です。」
「そうか、ところでマリー少尉も次の曲を踊るのだろ」
「ハイ、流石にドレスでなくブラウスとスカートですけど。ちょっと間に合わなくて」
「まあ仕方がない。」
「緑ベレーの色のサテン生地をミディアム丈でパニエをたっぷり、ブラウスも白いバラの様にフリルをたっぷり入れました」
・・・・・・
「誰だ、マリー少尉に酒を飲ませたのは」
「ゴールデンヴァーム少佐のようです」
「なぜだ」
「一曲目があまりに固かったので、気分を和らげるようにと勧めたらしいです」
「まあ、上官に勧められて断れずに飲んだのか。どれだけ飲んだんだ」
「カクテルを一杯だけと言ってます」
「どんなカクテルだ」
「なんでも"しょっぱい犬”というグレープフルーツ味の美味しいジュースらしいです」
「少佐も下心丸出しではないか」
「はぁ~、その辺は何とも言えませんが」
「マリー少尉もおぼこ娘でもあるまいに」
「おぼこだと思いますが」
「あ"まあ、兎に角サング曹長によく言っておいてくれ。来年は軍大に入ってもらうつもりだからな。弱点を洗い出して早く特戦将校として戻ってきてもらわねば」
「しかしあれだけ秋波駄々洩れと言うかコントロールできなければ、中佐命令で禁酒ですね」
「本人は上機嫌で秋波をまき散らしていたが、周りの社研の男子はびくともせず女子を躍らしていたな。キチンと壁となり女子の動きを引き出していた。」
「訓練の賜物です」
「クレマ先生の薫陶の賜物ということか」
「いえいえ、彼らの真摯な練習を見せてあげたいぐらいです」
「ところでクレマ大尉、貴様は大丈夫なのだろうな」
「私は良妻賢母、清廉潔白、清く正しく美しくです」
「それだけいけしゃあしゃあと言えれば大丈夫だろうが」
「目論見は達成できなかったかもしれませんが、これでMI7からの引き抜きはなくなりましたね」
「あれだけ分かりやすければ向こうも使いづらいだろう。それにしても学院生は5,6,7何処からも引く手あまただろ」
「個人の生き方ですのでそれは何とも・・」




