90 感傷
その時、中佐の執務室のドアがノックされた。
「誰か?」
「あの、ウリにここに来るように言われたんですけど、ミルキーとロゼッチと言います」
「ちょうどよかった。入って入って。中佐、教育第3中隊のミルキーとロゼッチです。二人とも番号と名前」
「76TG3-2-18ロゼッチです。」
「76TG3-4-09ミルキーです。」
「で、なぜにこの二人がここに来た。クレマ?」
「ハイ、中佐。樵が木を切り倒すには斧なり鋸なりそれなりのアイテムが必要です」
「アイテムね」
「今回の打倒ゴールデンヴァーム、作戦名“倒木”においても然りです」
「その微妙なネーミングは何とかならんのか」
「今回の作戦において斧に当たるのが“ドレス”です」
「でこの二人がドレスを作るのか」
「はい。教育第3中隊が誇る服飾の魔術士、デザイナーのミルキーとパタンナーのロゼッチです」
「エレメンターなのか」
「てへ、服飾だけにちょっと装飾しました」
「その、オヤジギャグは何とかならんのか」
「シーません。」
「クレマ、状況がよく理解できないんだけど」
「それは、かくかくしかじか、えんえん〇〇という訳」
「成る程」
「え”。それで分かるの」
「少尉どの、クライアントの言葉にならない要望や思いを形にするのがプロのデザイナーと言ものです。」
「それで、クレマ、1曲目から5曲目までの演奏曲は決まってるの?」
「だいたいかな。リストは来ているので」
「時間と言うか、光量は?」
「光量?」
「明るさよ、日の光の明るさよ。松明や提灯は使うの?」
「分かった。じゃ作戦会議ね」
・・・・・・・
中佐とクレマが窓の外を眺めなている。
「15時を回ったころか」
「そうですね。まだまだ真昼の明るさです」
「7月からは秋だと言うが、暑さはこれからだな」
「天は秋でも大地は夏本番です」
「アンシュアーサ導師が今年は稀有な年だとお言葉を残されて帝都に向かわれたと聞いている」
「有難い事です」
「お前ら五人はダルマンかと思っとが違うようだな」
「ちょっと違うみたいですね」
「この世に外から干渉するタイプかと思ったが」
「いえ、外でもなく内でもなくあえて言うなら、コインの裏表です」
「それとこれでなく、乙なる存在という事か」
「まだまだ分かりません」
「ある意味サング曹長のようでもある」
「サング曹長はどんな方ですか」
「古い付き合いになるが、いつも助けられてばかりだ」
「そうですか」
「長い話になるから言わんが、サング曹長は軍人の理想ともいえる」
「そうですか」
「困難な、どうしてよいか分からない状況でも、何らかの具体的な解決を果敢に断行する。」
「理不尽な状況の現実的解決ですね」
「それができる」
「少佐は?」
「私は夢を見過ぎる。なまじ帝国学院や士官学校出は熱に浮かされやすい」
「サング曹長は?」
「曹長は高等小学校出でな。あの歳で高等小学校とはそれなりに優秀という事だが、世の中の裏も表も見てきたというか・・・」
「辛酸を舐めて、という事ですね」
「今は私の隊を任せっきりだ」
「マリー少尉を育ててらっしゃると」
「貴様もこちらに来んか」
「まだそれは」
「まあ、無理強いはせん。その気になったらいつでも連絡をくれ。軍は本人の実力もそうだが、上からの引きと下からの押上が無くては何も出来んぞ」
「ありがとうございます。でも、一応“良妻賢母”派なんで」
「軍でそれを成し遂げた奴は知らんが、第1号と言う手もある」
「今は、特別任務の明日と明後日に集中したいので」
「サングがついて行ったんだ。特務も協力する、何とかなるだろう」
「そう願います」
「ところで、マリー少尉が踊れるという話を聞いたことが無いが…」
「グぇー(。-`ω-)、そいつぁーもんだいだ~」




