87 ソシ中佐、「お願い・・」
第4大隊の本部事務所にソシ中佐を尋ねたクレマは、中佐の執務室で紅茶の用意をしながら暫く待っていた。
「やー、待たせたな。残務処理は書類仕事ばかりで気が滅入るし、13日の式典準備は使えない奴が多すぎて作業が進まん。クレマ大尉に連隊本部に入ってもらいたいものだ」
「ソシ中佐の頼みとあらばと言いたいのはやまやまですが、本業の方がいろいろあって」
「どうした、トラブルか」
「今日は順調に計画想定内ですが、」
「明日の前夜祭に何か、食材が足らんか」
「いえ、今のとこは。アッ、ダンスフロアありがとうございます。ここに来るすがら設置の様子を見ましたがとても素晴らしいです」
「あー、ボウルルームという訳にはいかんが、雨も降らなさそうだから野天の床も乙なものだろ。お前が今晩の瞑想練習に使いたいというので、うちの特務と第3中隊の連中が突貫で作ったそうだ。よっぽど飯がうまかったらしいな。テヒに明日もよろしくと伝えてくれ。足りない物あったら特務の連中に頼んでやるってな。木製の床は明日のダンス大会が終わったらすぐに解体して明後日の観覧席に早変わりだ。そうそう気にせんでもよろしい」
「はい、ありがとうございます。とてもいい出来で、あれならピンヒールも安心して履けます。」
「まさかヒールで穴を開けるような凄まじい格闘ダンスでもしようっていうのか」
「いえ、学生らしい慎ましやかで微笑ましいダンスです」
「で何が問題だ。クレマ大尉らしからぬ持って回った言い方だが」
「実は、その明後日の閲兵行進のことなんですが」
「閲兵行進がどうした」
「出場順番をへんこうしてほしいので・・・」
「プログラムを変えろだと、例年通りでなぜ如何」
「それが教育大隊の行進が少しですけど凄いことになっていまして、特に内の第3中隊が大変で・・・」
「どうたいへんなのだ、簡潔に説明せよ」
「ハッ、通常、連隊長への敬礼行進は16秒で通過でありますが、教育大隊の各中隊は30秒程、第3中隊に至っては2分30秒かかります」
「はぁ~、貴様ら匍匐前進でもするつもりか?!」
「あー、それもイイですね。匍匐前進全6種類を入れると後1分30秒程欲しいです」
「馬鹿もん!どこの世界に閲兵行進で匍匐前進をする軍隊があるんだ」
「それもそうですね。そういう事で分裂を少し入れてみました。」
「分裂?ドリルマーチングか」
「そういう事で」
「ドリルを連隊長の前で延々2分30秒もやろうというのか」
「ちょっと盛ってみたらそういうことになったみたいで」
「他人事か。貴様は他人に仕事を丸投げする癖があるからな」
「部下を信頼して仕事を任せるのが上官の務めです」
「分かったようなことを言う。その結果がこれか」
「部下の尻拭いをするのが良い上官というものです」
「私は憎まれてもイイと思っている。人気取りをしているつもりはない」
「誠におっしゃる通りです」
「それでどうするのだ。通常は格下の者から露払いとか前座とか言われて出ていくものだだろう」
「それをどうか、後ろの方へ」
「はぁ~どのへんだ。第2大隊のあとに第3特殊戦闘中隊の膝代わりにでも出るか」
「いえ、もう一声」
「特務は出場せんぞ」
「出来ましたら最後の方に」
「トリか、トリを取りたいというのか」
「出来ましたら、教育第3中隊を大トリに…」
「貴様何を言っている・・・マージ―兵長、アリシオ中隊長をよべ。アリシオを呼べ~」




