86 七月十一日水の曜日は移動日
3-1-01ルイが学生代表として指示命令を次々と下していく。
「よし。出発準備は整った。各責任者は最後の点検をしてくれ。・・・ほとんどの者は二度とここに来ることはないと思う。軍に進んだとしてもだ。ここで我々は成長した、いや変わったと言った方が適切だろう。3か月前の自分はもういない。・・・全員敬礼。計画表どうりパレードの荷物部隊から出発。」
荷車を押すと言ってもほとんどが緩やかな下りなので、走り出さないように引き綱を持ちながら皆押し黙っている。
「いや~ね、みんなうつ向いちゃって。何、感傷に浸っているのよ。青春の1ページを刻んだ場所だからってさ。今日の合同晦練習会と明日の前夜祭とスケジュールは目白押しよ。そして明後日は閲兵式で有終の美を飾るのよ。うつむいてる場合じゃないのよ。クォンくち三味線じゃなくて、くち太鼓で行進ドラムの練習でもしたら」
「クレマ、それはよした方がいい」
「なぜ?」
「この歩き方というかテンポでマーチの練習をすると体に染み込ませたマーチングドリルに狂いが生じる」
「そうなの?」
「ああ、ベイユの緻密な計算で作り上げたプランはもう体に覚え込ませるしかなっかたよ」
「そんなに緻密なの?」
「たかだか20メートルの貴賓席前の敬礼ゾーン。普通に行進したら15秒ほどだ。」
「16.66秒だ」
誰かが怒鳴り返す。
「それをベイユの奴、2分30秒の大作にしやがった」
「?、四つぐらいのフォーメーションだよね」
「前進・貴賓席に正対・V字型・逆V字型の四つのフォーメーションであるには違いないが」
「じゃいいじゃない」
「そこに行くまでに、90度、180度、270度の回転右と左を使い、倍、倍倍速とストップモーションと早送りと時間さと前向きでの後退と斜行と交差とフィンガーパッション(指パッチン)とハンドビート(手拍子)でのカッコ付けポーズ・・・」
「分かった、もういい。聞かなかったことにする」
「少しは俺たちの苦労を感じてくれたか、クレマ。お前は高みの見物でいいよな」
「そう言わないでよ。ソシ中佐の命令でしょうがないのよ。それに私だって、ガッパーナが作ってくれたワッペンをみんなのベレー帽に縫い付けたのよ一人で。みんなが練習している時に一人寂しく、でも心を込めて100個のベレーに教育第3中隊のワッペンをつけていたのよ」
「そうか、いつかお前が偉くなったら、昔付き合ってたクレマと言う娘が俺の為に縫い付けてくれたベレー帽だと子供に自慢することにするヨ」
「あんまり誤解を生む言い方はしないでよ。こうして付き合っているのは事実だけど。心を込めたのも事実だけどサ」
「まあ、俺たちも大変だったけど、太鼓の奴らもよく耐えたよな」
「どうして?」
「いや、音楽好きのクォンとかは好きな事をやっているんだからそれはいいんだが、あのテナードラムの15人は唯、偶然というか誰かさんの思い付きでずーと立たされているようなもんだからな」
「うへぇ」
「あいつら、俺たちに先行して山を下りたら、下で他の中隊の太鼓叩きと合流してドラムラインとやらの練習だそうだ」
「まだ、完成してないの?」
「一応、楽譜みたいのはあるらしいが、天才クォンの新しい要求できっとどんどん変わっていくと思うよ」
「それはすごいわね」
「いや、それがクリスはすごいよ。すぐに答えちゃうから」
「でも後の連中はな兎に角耐えて耐えて何とかするしかない」
「それってすごい事ね!」
「どうしてだ?」
「だって天才の要求に最後は答えられるってことでしょ。普通の人にはできないもの。やればできる子なのよ。」
「そう言われてみればそうか、あいつら凄いのか!やれば出来るのか!」




