83 六月二十九日は|晦行(つごもりぎょう)
毎月29日は月齢29、ほとんど月が見えない。30日は月齢0、全く月が見えない。翌月1日は月齢1、朔月。月が籠る29日から30日にかけて晦の行を行う。
「さあみんな、ちゃんと食べて。今日は願晦よ。明日は完全聖曜日で食事がとれないから」
「クレマ、願晦とは初めて聞くけど何」
「それね。私も昨日初めて聞いたのだけど、12月30日は大晦と言うのにあやかって調度半年、太陽の通り道が白き道から黒き道に変わる夏至と月齢零の6月30日に次の半年に願いが叶いますようにという俗説というか民間信仰というかの呼び方らしいわ」
「明日は、結構重要な日なのですね」
「そうなのグレース、食研の腕の見せ所は滋養の多いこの食事と、7月1日の夏至祭の神饌のお下がりよ。各宗派によって神事がことなるから軍では一般的なちょっと素朴なメニューだけど、要望があったらなるべく答えてあげて」
「それは、テヒが疎漏なく手配りしてます」
「さて、ユニが心配してやまない予算の件ですが、ご心配なく。と言うよりもっと凄い事になちゃって」
「夕べ、アシリオ中隊長とかなりやり合っていた件か」
「そう、今回の教育大隊新兵訓練修了式とオディ川氾濫作戦の終了式典とそれに伴う前夜祭、慰労会を連隊と教育大隊合同で開催することになったの」
「そうね、教育大隊も一時的とは言え連隊の第4大隊に編入されたから、関係がない訳ではないと」
「そうそれで、教育大隊は各中隊ごとに出し物?アトラクション?を何か受け持つことになったの。それでそれに伴う資材や必要品の購入費が連隊主計局から支給されます。」
「どれぐらい出るんだ」
「それは常識的名目があれば中隊長が何が何してなんとやら~で、何とかなるそうよ。それに第4大隊のつまり教育大隊長の上司になるソシ中佐は主計畑出身だから裏技も表技も剛腕だろうが横車だろうがどんとこいだそうよ」
「ソシ中佐は特殊戦闘中隊と特務工兵中隊を育て上げた人だろ、それが部局将校なのか」
「その辺に興味がる人は直接本人に聞いてもらうとして、第3中隊は社交ダンス教室とダンス大会を開催することになりました~パチパチパチ」
「って、ほとんどお前の趣味だろ」
「じゃ、武研が武道大会やる。クリスは出場させないわよ。血を見るわよ。それよりダンスでしょ」
「平和的と言うか友好的と言いうか…」
「でしょ、それと食研には軽食甘味と軽い飲み物を500人分ぐらいお願い」
「え~、500人ですか」
「リーパ町の人々も招待するそうで、兵士は休暇が取れるから大概は外出だけど、それでも1000名位は警備や式典用に残るわ。それに教育大隊が500、町の招待客やらその他で500、まあ2000名の参加者見込みよ」
「500人分の軽食では足りない様な気がしますが」
「兵士の夕食は連隊で、招待客のメイン料理は連隊の食堂部が、教育隊の学生の食事は各中隊単位で用意して各中隊を食べ歩いて済ませることになったの、500食×5で2500食あれば招待客や非番の兵士の冷やかし分ぐらいは出るでしょ」
「机上の空論のような気もしすが」
「そこは用意周到の教育第3中隊よ。何か考えておいて」
「食研に丸投げかよ」
「連隊倉庫には在庫がそこそこあるわ。これがリスト、多少の増減はあると思うけど。いざとなったらそこからという手もあるし、それも念頭に置いてレシピと什器・調理器具の見積もりお願い」
「7月1日からは、13日の解散式まで突っ走る事になるか。いつまでたっても忙しいな。」
「そうよ、各研究会は研究報告を完成させて、さあ、私達はみんなが気持ちよく突っ走れるようにダンス大会に何が必要か書き出して、それから何が何して何とかなるような大義名分の捏造よ」




