76 お姫様も大変
ソシ中隊長のテーブルの周りには?マークが咲き乱れていた。アシリオ少佐格がアダン達に小声で
「クレマタイイとは社研のクレマのことか?」
「クレマとガッパーナがそんな関係だったなんて、社研のクレマの監督は総研のユニさんの責任でしょう。そうならそうと一言いってくれないと、私にもは配慮というものがありますから」
「いえそれは・・・」
突然、オルレアがテーブルの上に躍り出た。腰に手を当てマリー少尉を指さし、
「マリー少尉とやら、これは恋の戦いね。乙女の熱いパッションのなせる業ね。ならば、この戦い不在のクレマに代わって社研のクレマの一番弟子オルレア様が引き受けようぞ」
(オルレア様何を言っているのです)とクリスが引き留めようとするが
「エーい引き留めるな、なさあねばならぬ、受けねばならぬのじゃ、ここで受けねば貴族の一分が立たぬ、女が廃るのじゃ」
(また何にかぶれているのですか)と作業ズボンのすそを引っ張るが、意に介さず
「ここは貴族らしく決闘でカタを付けようぞ。如何じゃ」
「決闘なんて、それに私は貴族ではありません」
「なにを言っておる。少尉と言えば男爵並み。男爵と言えば末席とはいえ立派な貴族じゃ。そして、其方が勝てば妾がそなたの望みを叶えでやろう。勝てばガッパーナと一晩二人きりで過ごさてやってもよいぞ」
(また勝手な事言って、早く降りてください)そしてヤジが飛ぶ(マリー、そんな小娘何でもないぞ)
「そんな、私はただガッパーナ様にひと言・・・」
「皆まで言うな。乙女の恥じらい、深く心に留めよ。しかしじゃ、決闘と言っても妾では其方の相手にならん。其方は名高き戦闘兵団の将校、それに比べ妾はか弱き淑女。扇子より重いものを持ったことが無いのじゃ。そこでじゃ貴族の作法に乗っ取って名代を立てる。我が社研の弟弟子ルイを妾の名代とする。」
ヤジが飛ぶ(いいぞ,のじゃ娘。代理の名代なんてすごいぞ)(これで俄然面白くなるぞ)ソシ中佐が腕を組んで耳を触り鼻をポリポリポリと中指で掻いた。鳶色が素早く反応した。オルレアが中佐を振り返って、
「中佐殿、どうか乙女の願い、叶えてやってくれぬか。妾からも切に願う」
優雅にお辞儀をして見せる。それを見て
「こまりましたな。姫様。我々は重要な任務の途中ででございます。」
(え~)と声にならないため息とも非難ともつかぬ吐息が漏れる。
「そこを何とかならんかと、こうして頭を下げておるのじゃ、中佐殿、これからの戦勝祈願として神への奉納として何よりも可愛い部下の幸せの為、神聖なる恋の決闘を認めてくれぬか」
「我々は1300時にここを出立する所存です。姫様のお力でそれまでに終わらせて頂けるのでしたら、休憩時間による戦勝祈願、しかも貴族の矜持を保った奉納試合というのであるならば、姫様のお力をお借りしたいと存じます」
(やった~)
「ご理解頂き感謝するぞ。妾の名のもとに神聖なる儀式を取り行うものぞ」
「トーマス大尉、第五小隊以外は速やかに出発準備を整えよ。私は姫様とテヒ殿の紅茶をもう少し楽しみたい」
「了解しました」
したり顔のトーマス大尉がその場を去ると、急いで下知に向かった。
オルレアはクリスの小言を聞いていた。
「オルレア様なんですかあれは」
「だってお姫様ごっごしたかったんだもの」
「お姫様ごっごって、あんな変な言葉使いクレマが聞いたら鞭打ちものですよ」
「クリスが黙っていればいいのじゃ」
「また、変な言葉使いを」
中佐が見かねて
「姫様にはクレアのほかにも口うるさいメイドがいて大変ですね」
「そうなの、分かってくれる人がいてうれしいです」
テヒの淹れた紅茶をゆっくりと堪能したころ、支度が整った報告が来た。




