74 おもてなし
ソシ大隊の編成は戦時編成を活用した最大人員を要していた。小隊50名、5小隊250名で1中隊、第1中隊から第3中隊までを特殊戦闘歩兵(戦闘工兵)と称している。第4中隊は20名編成の小隊二つで変則編成ながら支援中隊(特務工兵)としている。第1中隊と第2中隊は夕べの内に夜間先行しているので、今は第3中隊と第4中隊及び大隊本部要員約300名ほどの行軍である。雨でぬかるむ道をダラダラと蛇行し馬と人が一体となって荷車を引き押し上げている。
「ルイ中尉。これが私が10年かけて育て上げた特殊戦闘部隊だ。」
と馬上のソシ中佐は鞍を並べるルイに語り掛けた。
「特殊戦闘部隊とは如何なるものでしょうか」
「別名を戦闘工兵、またの名を緑ベレーという。彼らはどんな部隊よりも先んじて戦地に赴き味方の主力を迎える準備をするのを旨としている」
「先駆けというのとは違うという事ですか」
「先陣の功を争うのではなく、勝利を導くための準備をして他部隊に栄誉をもたらすのが使命だ」
「中佐はよろしいでしょうが、兵は些か不満が残るのでは」
「そういった性格のものは選抜していない。愛隣の情を持つ者ばかりを全国から集めた。勿論体力技能抜群であることは言うまでもない。それで彼らの誇りと団結心の表れで緑のベレー帽を部隊の制帽にしているそれが唯一、顕示的行為だ」
「鳶色の帽子の方もいらっしゃいましたが」
「彼らは特務工兵と一般に呼ばれている。その選抜条件は特殊能力つまり魔術と呼ばれる能力を持つ者で構成されている」
「魔術士部隊ですか。」
「今はファイブエレメンタ―と分類名を改めた。」
「という事は他の魔術もあるという事ですか」
「以前は魔法士としていたが、貴様たちの所為でダルマンとして区別している」
「私たちの所為ですか。」
「ああ、クレマとかな」
ルイの後ろにしがみつくルキアが軽く頭突きをルイの背に打つ。
「そういえば貴様は剣術研究会だったな」
「今は武術研究会、武研と改めました。お陰で私の名札は下段筆頭ですが」
「下段があるということは上があるという事か」
「下段に5人、中段に10人この方たちが他の学生を実際教えています。上段者は5名です」
「上段と中段の違いは?」
「中段者は得意の獲物が一つか二つでしょうか。上段の方は個人の中では得意不得意があるそうですが、不得意と言われる得物でも中段の方よりは上です」
「そんなに違うものか」
「明らかに才能が違うのだそうです。女学生に人気な杖や棍を教えるワットやアッシュは中段ですが大忙しです」
「なるほどな。貴様の腕前が見たいものだが、ではクリスは上段筆頭と言いう事か」
「いえ、クリスは別格で、相談役という事になっています」
「なにが違うのか?」
ルシアがルイの背中でつぶやく
「ファイブエレメントではない世界の・・」
ちょうどその時ホビと鳶色帽が馬の前に着地した。驚く馬を何とか落ち着かせソヒ中佐が囁く。
「クレ、何事か?」
「中佐、飯がうまい。カボ小隊長が食材と第1特務を借りて来いと」
「そんなにうまいのか?」
「野戦食だから豪華でないが、街で食ったことのないうまさだ」
「食材は理解するがなぜに第1特務を欲しがる。」
「竈が足りない。」
「許可する。担げるだけ担いで先行しろ」
ルイを振り向き
「説明しろ」
「テヒが本気を出したのだと思います。ホビ、第2のボルドーが指揮を執っているのか」
「そうだ」
「ならば、第4と第5をテヒと食研の補助に回し、残りは大隊の荷揚げの手伝いにと伝令」
「承知」
と次の瞬間には姿を消していた。
「そんなにうまいのか」
イシュトが
「アシリオ隊長が食糧倉庫を空にしても良いと言っていたので、テヒが本気を出したのかも」
「どうしたルイ、青白い顔をしているぞ」
「中佐、明日からの食糧が心配です」




