7 二日目が始まった
クリスは目を覚ました。ベットから抜けでて、窓のカーテンの隙間から外をみるが、空はまだ暗い。机の上の燭台を手探りで持ち上げそっと廊下にでる。廊下の常夜灯から貰い火をして部屋に戻ろうとすると隣の部屋から人影が滑り出てきた。
「アマンダおはよう」
「クリス流石に時間ぴったりね」
「まだまだ暗くて寒いわ」
「みんなを起こして支度させないとね」
「ここは5分前行動よ」
「OK分かってる」
とサムズアップしたアマンダが蝋燭の灯かりを揺らしなが部屋に消えるのを見送った。
廊下の向こうの他の班長達が次々と灯かりを移して部屋に戻っていく光景を見つめながら、
「流石に班長達はしっかりしているわね」
と声にならない独り言をいうと自分も足早に灯を庇いながら部屋へと戻っていった。
・・・・・
「アニエス、わるいけどエミリーを手伝って。レア、冷え症ならストッキングの重ね履きもいいわよ。イレーヌ襟巻だけじゃ寒い・・・私の大判のストールを貸してあげるからべそかかない」
「クリスはそれでいいの」
「私は下に着込んでいるから大丈夫よ。エミリー持ち物はちゃんと手に持って。じゃ、みんな行くわよ。」
蝋燭を吹き消すと五人は練兵館へと急いだ。
・・・・・・
練兵館北側の壁際には見所が組みたてられていた。そこにはひっそりと老人が端座している。
中隊長が見所脇に立っていた。全員が整列するのをみて中隊長が声を発した。
「今日から本格的な訓練に入る。見所にお座りになられいるのは、これから三か月間、貴様達を指導してくださるアンシュアーサ導師である。総員、姿勢を正し、礼」
中隊長をはじめ全員が立礼を行う。
「高座から失礼しますよ。皆さん気楽にしてください。では、中隊長さんみんなを座らせてください」
「それでは、各小隊長の指示に従って所定の場所に付け。」
100人の中隊隊員が練兵館一杯に広がっていった。
「では、皆さんまずはお持ちの毛布を四つ折りにして床に敷いてください。中折り山が前になる様に敷いてください。ではクッションをお尻に当てて毛布の上に座りましょう。膝を折り曲げて背筋を伸ばして胸は高い位置に、横から見た時、耳の孔と肩峰の先端が垂線上に並ぶように、顎が自然に引けて視線は3間4~5メート先ほど先の床を見るようにして半分ほど瞼を閉じます。所謂半眼ですね。」
静かだがよく通る声でアンシュアーサ導師の指導が始まった。