68 会食の反省 控室で
連隊本部の第4大隊長控室に会食を終えた3人が帰ってくる。どっかりと音を立ててソファに腰を下ろし天井を見上げ、溜息を吐きながら床に顔を向ける。マージ―兵長の淹れたお茶を手に取りマリー少尉がつぶやく。
「疲れた~」
クレマ大尉が
「あのくそやろ~XXX」
ソシ中佐が
「大尉。禁止用語の連発は懲戒対象だ。」
「一語だけです。連発はしてません」
「そうか、ならいいが、品がない。礼儀作法教授方としては如何なものかと思うが。しかし、想定内というかこちらの思惑通りだ。」
「あれがですか」
「そうだこれで、堤防が決壊すればこちらの計画が一歩進む」
「中佐は何をお考えですか!。決壊すれば被害が甚大です。」
「それを第1大隊が最小限に食い止めることになる」
「それは手柄を第1のゴールデンヴァーム少佐が持ってちゃうという事でしょう」
「計画通りだ、むしろ少佐を失敗させる訳にはいかないのだ」
「どういうことです?」
「マリー少尉、これから話す事が漏れたら貴様の所為だからな」
「え~!だ、だ、大丈夫です。他言はしません。一生墓まで持ってゆきます」
「よし。ならば、話すが、この話は正月の御前会議から始まる」
「半年前の御前会議ですか」
「そこで陛下が〝オティ川”と呟かれた。」
「陛下の呟きですか」
「という事でいろいろあって、私の所に話が来たのが4月の事だ。それを受けて予備調査をしていたらクレマ大尉の所の情報が入ってきて計画の練り直しを行った。結果、シャーリ少佐から大隊を取り上げる形で基本計画が立案された。これは、私の直属の上司とユニヴァ連隊長の上の方とで合意され、本日陛下から連隊長にご下問があり致し方なく内諾、大本営からの命令が連隊に降りた態を取っている作戦だ。」
「なんだか持って回ったというか怪しいというか、いろいろあってで省略が大胆過ぎます」
「軍の派閥と王宮とその他いろいろの思惑が絡んでいる計画だという事だ」
「いろいろがいろいろ多すぎます」
「まあ、佐官になれば分かるというか致し方ないというかそういう事だ」
「すると、陛下のお気持ちを利用していると言いう事ですか」
「人聞きの悪い表現だね~クレマ大尉。陛下は呟かれたのだ。陛下の心中をお察しするとか、斟酌するとか忖度するとかが臣下の務めだろう」
「つまり、中佐が慮った結果がこの計画という事ですか」
「慮る。そう雅な表現が出来るじゃないか」
「しかし、計画が複雑すぎます」
「軍事の最終局面は単純化による不条理の現実的解決だが、それまではあらゆる事象を勘案すべきなのだよ」
「その流れがこのひと月の間の出来事ですか」
「そう、あれとこれとそれと洪水を足して煮込んだらこうなったという事」
「2でも4でも割らず煮込むのですね」
「いい出汁が出るというか、マリアージュ?かな。クレマ大尉もこっちの世界に来ない?」
「こっちの世界とは」
「☸∬¶…(魔術士部隊)」
クレマが思わず息を飲み体を硬直させた。
何か言わなければと口を開きかけた時、マリー少尉の肩越しの天井の一角が音もなく開き逆さ釣りにウリの半身が出現した。片手を耳に、唇に人差し指を当てている。
クレマは右人差し指でこめかみをトントンスーッと挙手の礼を行った。
マリー少尉が怪訝な面立ちでクレマを見ていた。




