63 六月十三日は雨
雨が降り始めた。ユニヴァ連隊第4大隊第3中隊は大隊の練兵館に集められていた。ソシ中佐の訓示が続く。
「・・・という事で、この雨が相手であるから不測の事態が起きると思われる。しかし、日頃の訓練を生かして適切に対処して欲しい。最後に臨時にこの作戦の間、手伝ってもらうことになったクレマ大尉を紹介しておく。クレマ大尉挨拶を」
「はい。この”ジューンブライド作戦”の間お手伝いをさせていただくことになったクレマ大尉です。後ろにいるのはウリ兵長で私の従兵を務めてくれます。連隊勤務は初めてなので皆さんよろしくお願いします」
解散の号令の後、あんぐりと棒立ちになっている一人の女性兵士がいた。
「アッ、ローズマリー軍曹だ。どうでした私の挨拶、突然振られてびっくりしてしまって。」
「・・・・」
「エッ、もしかしてスカートまだ短いですか。夕べ一生懸命直したんですけど」
「自分は・・これで失礼します」
と硬直したローズマリーは敬礼すると回れ右をして脱兎のごとく駆けだしていった。
それを見ていたソシ中佐が
「どうした」
と声を掛けてきた。
「いえ。夕べ、スカートが短すぎると注意を受けたので、これでいいか確認してもらおうと思ったんですが、何故か逃げられました。」
すると中佐の横にいた将校の一人が
「ローズマリー軍曹は将校とはあまり親しくしないタイプなのですが、その分、下には厚いタイプです。失礼しました。第5女子小隊長のマリー少尉です。」
「クレマ大尉です。(仮)なんですけどよろしくお願いします。ローズマリー軍曹から聞いていますよ、かわいらしい少尉殿って、本当に可愛い方ですね」
「クレマ大尉こそ鳶色のベレー帽がとてもお似合いです。その縁取りの徽章は階級章と特務将校と連絡将校のものですね。それに副官懸章を下げてらっしゃる。ソシ中佐直属の方ですね。」
「成り行きでそうなっちゃて、戸惑っています。どうぞよろしく」
「明日早く出発ですので今日一日のお付き合いになると思おいますが、こちらこそよろしくお願いします」
「ローズマリー軍曹に叱られないように頑張ります。仲を取り持ってくださいね。今朝も”飯の食い方が遅い”って叱られたばかりです」
「何を二人で褒め合っているんだ。これだから女はめんどくさい。マージ―兵長、ローズマリー軍曹を呼んで来い。服装チェックをお願いしますってな。午前中はまだ時間があるだろう。午後からは荷造りなんかで忙しくなるからな。軍曹に連隊を案内してもらえ。それからウリ兵長をここへ」
ウリが素早くソシ中佐の前に現れると
「※§✘◎▽◇・・・・・」
それを聞いて、ウリとクレマは真っ青になった。
「Δ##⃣$・・・(お前たちのつたないサンス語でわたしの話が伝わるかしら)」
「すいません。失礼しました。」
「△§※※♪…(サンス語で返してください)
「Ξ※¶‰∬・・・(どか、ゆるし、くだされ)」
「¨Е※☸※・・・・(ウリ昼まで私の部屋で寝ていいぞ。屋根裏より快適だ。)」
クレマはムンク状態に固まっていた。ウリは青くなったて冷や汗をかきながら敬礼をすると脱兎のごとく部屋を飛び出した。
マリー少尉が
「なにか異変でしょうか?」
「クレマ説明してやれ」
「っは、はい。いいえ何でもありません。ばれていただけです」
「特務の方はいろいろありますからね。深く立ち入りはしませんが随分顔色が悪いですよ」
「御心配には及びません。ありがとうございます。流石、マリー少尉はなれてらっしゃる」
「ソシ中佐に鍛えられていますからね」
とフフフと笑った。
それを見ていたローズマリー軍曹がつぶやいた。
(呪いの呪文だ。魔女のマウント取りだ)




