61 シャワールームで
ソシ中佐と別れたクレマは連隊の酒保に走った。兎に角、嗜みとしての必需品をあがなおうと走った。
「それと、これと、あれと、それからえーと、アンパンとキャラメルも下さい」
必需品を手に入れたクレマはほっとしながら連隊兵舎の前を歩き教えられた女性士官用の兵舎に入る。
「ここね、流石に空き部屋だけあって訳アリ部屋かな」
そう自分に納得させながら唯一の荷物であるサドルバックと貸与の制服を作り付けのベットに投げ出す。
「まずはシャワーからね」
と、つぶやくと買い求めたタオルと石鹸、歯ブラシなどシャワーセットを抱えてシャワールームに向かう。ちょうど混む時間帯なのかシャワー室は満員で暫く待つことになるかと思った。が、すぐに一人のガタイの立派な女性が出てきた。慌てて服を脱ぎ始めると
「おい新人、見ない顔だがどこかのお使いでここへ来たのか?」
「はい。いえ、先ほど着任しましたクレマと申します」
「そうか、それにしてもそのスカートは短すぎだぞ」
「はっ、はい、スミマセン。マージーさんがこれを着ろと」
「マージ―兵長か。あのスケベ野郎、自分の趣味を押し付けやがって。マージ―が世話をしたって事は第四大隊か?」
「はい、ソシ中佐の副官・・」
「そうか気の毒にな、副官室付きか。ソシ中佐も一応女だからな、副官室に同姓の職員がいるわな。マージ―兵長じゃどうにもならんこともあるだろう」
「ところでマージーの野郎に何かされなかったか」
「いえ、大変親切にいろいろ教えて頂きました」
「いろいろ?いろいろとはなんだ」
「制服の事とか、酒保の利用のしかたとか、仕事については明日から優しく教えて下さると・・」
「はあ~、マージ―の野郎ちょっと奇麗なお嬢さんを見るとすぐこれだ。気を付けなお嬢ちゃんあいつは30にもなって兵長止まりなのは女でしくじったからさ。あいつは顔も頭も腕っぷしもイイが何より女に手が早い。なんでも将軍の娘に手を出してそれ以来、伍長にもなれないでいるって、そんなやつよ」
「はッはい、気を付けます。あのスカートは今晩中に裾だしします。」
「いい心がけだ、シャバから中に入ったら、軍属とはいえ軍隊の一員だ。何かあったら第三中隊第5女子歩兵小隊のローズマリー軍曹に言ってきな。とくにマージ―の野郎が色目でも使った日にゃぶっ飛ばしてやっるから」
「ありがとうございます。ところで女子小隊とは珍しいですね」
「あー、ソシ大隊は特殊大隊とかでいろいろあんだ。女子も男子に劣らない兵士である事を証明するんだとかで特別に集められたんだがな、サング曹長は立派な下士官の鏡のような人なんだが、小隊長がな、マリー少尉がな新米なんだが見た目は可愛いお嬢様で娘としちゃいいんだろうが軍人としちゃな、気が小さいというか押しが弱いというか」
「そうなんですか、ご苦労なさっているんですね」
「なに、俺たちはサング曹長がいるからご苦労っていう事はないんだが、本人がな、ソシ中佐の元て苦労しているらしいぜ」
「いじめとかですか」
「ソシ中佐はそんな人じゃないのはすぐわかるさ、上官としてはいい方だ。さっぱりしててな。でも化け物らしい」
「ばけものですか?」
「そう、これは本当にあったことだが、去年マリー少尉が着任早々野戦訓練の後、テント風呂にソシ中佐のお供をしたんだが、そこでなんと」
「なんと・・」
「気絶してぶっ倒れた」
「何故?」
「絶対教えてくれない。俺も何度か聞いたんだがブルブル震えるだけで青ざめて終わりだ」
「それほどひどい何かが・・」
「あーきっと化け物みたいな体をしているんだぜ、もしかしたらオトコかも」
「軍曹いつまで裸で駄弁っているんですか、新人をいじってないで見送りに行きましょ。第一と第二が夜間行軍だそうですよ」
「なんだって、いよいよ始まるのか」




