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帝国学院編  5タップ-2  作者: パーナンダ
帝国学院入学編
58/204

58 大隊本部にて

 連隊本部の第4大隊事務所は別棟に在った。玄関の脇にはユニヴァ連隊第4大隊事務所と大きな表札看板が掲げられていた。その横に76帝国学院教育大隊本部と紙が貼られていた。ウリに馬を預けイノー副隊長とクレマは当番兵に来意を告げる。すぐさま二人は隊長室へと通された。大隊長は伝令書を受け取ると、


「イノー学生、何か伝言はあるか」


「いえ、伝令書だけを預かりました。後は大隊長の命令を受ける様にという事です」


「了解した。では、精読して返令書を作成するまで別室で待機せよ。ところで、その副官懸章を下げているのは貴様の副官か」


「いえ、クレマ学生はアシリオ中隊長の副官として同道しました。」


「アシリオは副官を持つ程に偉くなったのか。・・・クレマ学生はこの場にて待機せよ」


「では、別室にて待機いたします」


と、イノーは敬礼すると従兵に案内されて退出した。


クレマは居た堪れなかったが、その場に直立してソシ大隊長と書かれた執務机の卓上名札を見詰めていた。


伝令書を読み終えた大隊長は執務机から立ち上がり窓に歩み寄りながら


「クレマだったかな」


「はい、76TG3-5-16クレマ学生です」


「ルシアという学生の言葉を信じるか?」


「はい」


「根拠は」


「根拠は今週から第3中隊ではパン焼きの試作を始めました。そのなかで・・」


「何故にパンを焼く。」


「新しくパン焼き窯を作ったので様々なパンの試作を始めました」


「大隊本部から送っている食糧が足りないという事ではないのだな」


「はい、学生の自主課題として食料及び糧食研究の為に小さなパン焼き窯を作成し手始めにパンを焼いております」


「話の腰を折ってすまぬ。ルシアの事を」


「はい、ルシアはパンの焼け具合というか窯の中の温度というかそう言ったものが分かるのです。医術に詳しいものは気が読めるとも申しております」


「気か。アンシュアーサ導師様には相談したか」


「中佐殿はアンシュアーサ導師様をご存じですか」


「些か知己を得ている」


「そうですか。ならば、アンシュアーサ導師様はプ・ラーナが見えるタイプと」


「そうか、ルイ分隊長は元気か」


「もちろん元気ですが。」


「確か学生会議なるのものを組織していたな」


「はい、新兵訓練のほかに学院生としての課業もありますので分隊長会議と学生会議を統括しております」


「ルイは準備は出来ているかな」


「お言葉の意味が測りかねますが」


「軍の方としてもこの雨を予想して準備を進めておるが、相手は天候だ予測がつかない。状況によっては教育大隊にも動員が掛かるかもしれない。」


「それで、準備ができているかと。ならば早急に帰って準備を整えます」


「そうだな。マージ―、イノー学生を呼んでくれ」


ソシ中佐はそう従兵に声を掛けると、命令書を書き始めた。


「イノー学生、アシリオ中隊長にこの命令書を届けてくれ。口頭での伝令はない。いや、まて、そうだな。

健闘を祈るだ。」


「イノー学生伝令文を預かりました。口頭伝文は"健闘を祈る”です。」


「よろしい。アーそれから、クレマ副官を借りるからよろしくとな」


「?」


「復唱は」


「〝クレマ副官を借りるのでよろしくな”であります。」


「よし、ではさっさと行け。飛ばせば日暮れ前には帰投できるぞ」


「分かりました。失礼します」


イノーは伝令鞄に命令書を突っ込むと敬礼もそこそこに隊長室を飛び出そうとした。クレマは慌ててイノーの腕を掴むと、


「ちょっと待って」


と引き留め、ウエストバックの手帳を取り出し、懸章のペンシルで何かを書きなぐるとそのページを引きちぎり


「イノー副官、ルイにこれを」


と紙片を握らせた。



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