55 クレマの部屋で、その2
クレマの執務室で会議は続く。イシュトの発言にみんなが耳を傾ける。
「僕は医術志望なのですが、少しは気を感じることが出来ます。それでルシア、ウリをどう思います?」
「3班のウリですか、えーと言葉で表すと、すごく特徴があって分かりやすいです」
「分かりやすいんですか?」
「ええ、普通の人は色々な色があったり模様や流れがあって誰だっけと思い出すのに時間が掛かるんですが、ウリさんは何にもないんです。最初は見えないのかと思っていたんですがそうじゃなく普通の人のような流れや模様がないんです。それってかえって目立ちます。」
「人がいるのに流れがないという事ですか」
「そうです。この頃やっとわかりましたが、流れがないのではなくって透明な陽炎のような流れなのでぱっと見では見えないのだなと思います」
「成る程、その説明で僕は納得できるというかルシアさんの能力を信じることが出来ます」
「イシュト、流れとか気が見えるとすごいの?」
「見えないよりは見えたほうが良いということ。見えればその気の流れに干渉できるようになるかもしれないし、何かをしたらどうなったという判断ができます」
「気に直接干渉はできないの」
「気に直接魔術士のように干渉できるかはこれからでしょう。ルシアの人生の選択です。人の気に直接干渉するのはその人の人生を変えることになるかもしれません。僕にとっては非常にうらやましい能力です。患部がどこなのか薬が作用したのかを自分の目で確認できるのですから」
「イシュトの意見は分かった。ルシアには気を見る能力があるということで一旦終了しましょう。」
その言葉を聞いてテヒがお茶を淹れ始めた。
「テヒのお茶を飲めるなんて幸せです」
とユニが顔をほころばせると
「これが役得ってやつか」
とアダンがまぜっかえす。
「そう言ってくれるととてもうれしいわね。もう一つ役得があるわ。試作している携帯食用のパンなんだけど試食してみて」
「新月瞑想の断食時間は過ぎているから食べても大丈夫よね?」
とグレースが一枚摘まむ。
「う~ん、甘くもしょっぱくもなくてボソボソした感じですね」
「クッキーみたいに美味しとは言えないわね」
「とに角口の中が乾く。お茶を下さい」
「予想通りの回答だけど、このパン、乾燥パンって言ってるんだけどこのパンがこの3日間の雨の後2週間12日間変化がなければとりあえずの完成としたいの。どうかしら?」
「焼いてから2週間は保証できるパンという事ですね。しかし、2週間で出し入れしなければいけないとなるとちょっと面倒かな。できれば3か月持てば相当な量の例えば中隊単位の250名分の保存と入れ換えに余裕が生まれるけど」
「どういいう事?」
「例えば月に100食生産して3か月づつ保管していけば古くなったものを100食づつ何らかの形で放出する流れを作れます。常に300食の備蓄がある状態で毎日何枚かのおやつがあるという事です。できれば1年単位の方が楽ですがそうすると半年に一回の入れ替えですむとかそう言ったことが糧食問題として考えられます」
「イシュトの立場からどう思う」
「そうですね。小麦だけでなくドライフルーツや栄養があると言われるゴマなんかをまぜこめないでしょうか。それにこの大きさにしたのは何か理由が?」
「それは、小麦の使用量から五枚で一食分の普通の食パンと同じになる様に作ってみました」
「そうですか、誰かがひと包みの乾燥パンを持っていれば、おやつに班員五人で分け合うこともできますね」
「そういう状況も想定できるわね。急場をしのぐ携帯食の利用法の研究も必要ね」
「ただ、今のパン焼き窯では一回に10枚程度しかやけないのよ。」
「なんで?」
「構造的問題と大きさかな。もともとピザを焼くためのものだったらしくて乾燥パンを焼くには使い勝手が良くなのよ。もしよかったら専用の窯を作って欲しいんだけど」
「ユニ、どうかしら」
「窯を分析したクニャーゼ達に検討を依頼してみます」
「そうね、お願い。一息ついたところで3日間の土砂降り問題に戻りましょう」




