43 6月1日は月齢1
第一回会議を終えた後、クレマはアダンを引き留めお茶の相手をさせている。
「もう、19時30分になる。月も沈んだ。長話は明日にしてくれ」
とアダンが言うと「ちょっと待ってて」と言い残し部屋を出るが1分もせずに戻ってきて、
「第3のキュリー小隊長にはアダンは中隊長の用事で少し遅れます。と言ってきたから少し付き合ってよ」
「なんだかあんたにこき使われそうで嫌なんだが」
「聞き役がいないと独り言を言う変人になってしまいそう。我慢して、」
「充分変人だろ、で何を聞けばいいんだ」
「まず、第1のルネ、どう見る?」
「15歳飛び級で帝国学院に入れる秀才、ナンバースクール出だから、親は貴族。典型的な法服官僚だな。
「そう、ナンバースクールは12校だっけ、一つの基準よね」
「3-2-07、グレース、リリィ女学園卒、16歳。フラワースクール出で帝国学院に現役で入るとは単なる秀才ではないな」
「フラワースクールって?」
「頭の中がお花畑な女子校出身なのにという意味。帝国学院は男女の区別はあっても徹底的に公平だからな、平等でないのは本人の責でも学校の責でもないが、実力実績主義だ。そんな学院に女子校から現役で入るのだからこれも、一つの基準?か」
「分かったわ。次の第3はもっとも訳の分からない人物ね。3-3-13アダンか」
「オイオイ、ひとを無理やり引きずり込んでおいて怪物変人扱いはひどいだろう。だいいち本当に中隊長の人選か?」
「もちろん、中隊長直々の人選よ。チョイスは私だけど」
「そんなことだろうとは思ったが、で、3-4-18ユニ。ギルド専門学校商科の出で17歳か。一応社会経験あり、ギルド専門学校校長推薦、ギルド商会長推薦あり。人物を見込まれたという事か。学生視点以外の意見を期待というところか」
「そう、第1、第2はどうも貴族や秀才系が多いけど、第4、第5は平民、職人系が多いな。で、第五は3-5-03イシュクか」
「そう、第4、第5には耳族や地方の少数自治区出身者もいるの。」
「それで、イシュクは辺境伯推薦か。どこの辺境伯か分からないが地方出身である事は確かだな」
「で、この五人で何をするんだ」
「それが問題。何をすればいいかが分かればすべきことは自ずと明らかになるのだけど」
「オイオイ、さっきはあれがあれしてなんとやら~と言っていたぞ。」
「アダン、今のところ中隊長と私しか知らない事なんだけれど」
「なんだ」
「大隊長が交代したらしいの」
「?」
「普通はそれなりの発表なり、事前のうわさなりがあるべきでしょ」
「突然死かぁ」
「違う、だったら副長が代理昇格対応でしょ」
「分かる様に言え」
「今朝、突然の行進訓練だったでしょ」
「突然なのか」
「そう、今朝7時前に大隊本部から伝令が来て口頭伝達。その後命令書受理のサインをして命令書をもらったんだけど、教官たちもおお慌てで、ライン引きなんかしていたのよ。命令書も斜め読みで、よく確かめていなかったらしいんだけど、お昼に中隊長と話している時に命令者のサインがソシ中佐であることに気づいた訳。」
「なんかお粗末な話の様に聞こえるが、わざと仕組まれている様にも聞こえる話だな」
「でしょう?。それで、中隊長も何か感じる所があったみたいで、あれをあれしてアレすることになったの」
「流石アシリオ中隊長というところか。何を感じたのか分からないが、学生とはいえ中隊を預かるというと大尉格の評価か。しかし、具体的には確証も物証もなく心証のみといったところか」
「命令伝達の異常さと、命令者がソシ中佐という物証があるわ」
「そうだな。教育大隊500名に中佐はおかしいか。人事なんて何らかの前兆があるもんだが、噂も予兆も事後連絡もなしというのは異常だな」
新月が沈んだ夜空を見ながらアダンは考え込む。




