42 自己紹介
六月の日は長い。18時を過ぎてもまだ明るいが、窓を閉め蝋燭を灯し部屋を明るくする。
ソファに座っている全員が紅茶に口を付けたのを見計らってクレマが話を続ける。
「了承して頂いたものとして、自己紹介から始めましょう。改めて私は3-5-16クレマ、17歳。この学生教育計画の責任者として、一切の責任を負いますので、皆さんは私の命令に従ってください。中隊長以下の教官とのすり合わせなどは私が行います。では小隊順に」
銀髪の男子学生が姿勢を正し口を開く。
「3-1-04ルネ。15歳。第八貴族学院出身。法服志望だ。」
「15歳でナンバースクール出身とは秀才ですね。」
「いや、馬車馬ように勉強して何とか飛び級で帝国学院に入れたが、ここには天才、奇才がいっぱいいる」
「例えば?」
「例えば第1小隊のクリスだな。美人なのはいいとしてといっても、ここは美人しか入れないのか」
「そうね、選考基準に、容姿醜悪ならざる事、という一文がるらしいわ」
「本当か嘘か知らないが、頷ける。」
「で、クリスがどうすごいの」
「どうということはないが、ルイを手なずけている」
「手なずけるとは?」
「まあ、本人が公表しているから言ってもいいと思うが、ルイは騎士爵持ちだ。」
「そうね、みんな知っているけど。それで、第1小隊の01番、相当、上の期待が大きいという事ね」
「そのルイがクリスに対しては何だか、あからさまではないがへりくだっているというか、ハイハイ返事をしている。一応、分隊長で学生代表だろう、それが下手に出てるような、締められたわけでもないと思うが」
「クリスはどういう態度なの?」
「クリスは、気にするでもなく他の学生と同じように接しているようだが、ルイが変なのは何となくわかる」
「そうね、いい機会だから取って置きの話をするわ。ここだけの秘密、ではなく機密情報よ。職業上、立場上知りえた情報は漏らしてはならないという、守秘義務が発生するの、私達は」
といって、紅茶を一口飲んでクレマは話を続ける。
「皆さんが知っている様にクリスは私の友人です。クリスは5,6歳の頃から騎士の訓練を受けて15歳、この学院に入学が決まった時点で私達の領主から騎士爵を授爵されたの。一方ルイは従軍経験があって軍功を上げたのと親が貴族である関係で1年ほどの騎士修行で騎士爵になった経緯があるの。それでルイには自分が正当な騎士ではないという思いがあって、それで、ルイはクリスに弟子入りしたの」
「弟子入り?」
「そう、師匠に入門したの。私がクリスの付き添い人、オルレアが証人。そこでニタニタしているアダンがルイの付添人として入門式をしたわ」
「騎士爵になるのは面倒な手続きがいるのだな。しかし、アダン君はなんで?」
「俺か。まあこの中隊じゃ俺が男の歳頭で、旅慣れていて、世間ずれしているからかな」
「まぁ、そんなところね、オルレアはみんな気づいていると思うけど実家が高位の訳ありでクリスの友人という縁で、黒騎士扱いされないために後見人というか付き添いというか古式にのっとって入門式をおこなったわ。クリスは正当な騎士で騎士爵持ち。何とか剣術の免状持ちで実力は折り紙付きだそうよ。私にはクリスの強さは分からないけど、中隊長が言うには親衛隊クラスは確実だそうよ。」
「親衛隊の強さが分からないんですけど」
「中隊長がいうには、招集兵小隊ぐらいは一人で引き受けるそうよ」
「中隊長は詳しいんですね」
「単なる受け売りよ」
「はあ?」
「まあ、クリスが言うには職業軍や精鋭部隊ではとてもそうはいかないけど、招集兵は素人だから50人位はどうとでもなるそうよ」
「素人でも50人ですよ。どんだけ強いんだ」
クレマは突然立ち上がり天井に向かって独り言を叫んだ。
「それね、そこらあたりにあれがあれしてアレな回答が有れするわ。」




