36 第二回認定試験日
五月の第4聖曜日24日の夕方、認定試験対策会議を終えてクレアは自分に与えられた士官室にアダンを誘った。
「クレア、この部屋は中隊長室並みだな」
「アダン、来てくれてありがとう。そうなの私の執務室にと中隊長が用意してくれたの」
「それはまた豪勢というか、お気の毒かな?」
「お気の毒が正解ね。あなたには伝えておくけど、今回の認定試験対策学生会議は前にもいった通り、50名の学生の学力の底上げを依頼されたことから始まったのよ。」
「それは聞いた。単なる授業じゃつまんないという事で、教え合う形式で中隊全体の学力向上を狙うことにしたんだろ。」
「そう、まあその時、形式的には3小隊分の教育事業を請け負う教師として、準子爵格教師扱いという身分を頂いた結果がこの執務室よ」
「すごいな、いきなり中尉扱いか。言葉使いには気を付けなきゃな」
「アダンまで冗談はよしてよ。ところで今までのところ、試験対策は順調といって良いかしら」
「そうだな、流石に各貴族学院やギルド学校を優秀な成績で出てきた奴らの試験対策はきめ細かい。」
「どんなところがきめ細かいと?」
「例えば、第1週の合格者12名だが、彼らはもともと受かっていてもおかしくない成績だ。そこで、基本的な復習とケアレスミス対策に重点を置いた指導だった。で今日の合格者30名だが、2週間かけて弱点をみつけ対策を立て万全を期して試験を受けさせた。無理に第1週で合格を狙うような博打的な事をさせなかった。分析と対策立案と指導といった能力が高いと言ってもいいかもしれない」
「つまり、私より優秀な教師または指導者が何人もいるという事ね。」
「ハハハハハ。それよりどうしたんだ。今日、錬金学を落としただろ。」
「数学が苦手でそのことが心配だったの。」
「数学はパスしたじゃないか」
「そう、ベイユとヒュパのお陰ね。」
「うちの小隊のベイユだな。ヒュパ?は」
「ヒュパは第2小隊よ。ベイユは数学の天才ね。ヒュパは目立たないけど本当のインテリね。ベイユの天才性を引き出しながら数学的言語を私に分かる言葉に翻訳して話してくれたわ。それ以外もいろいろ面白くてつい三人で話し込んでしまって、錬金学なんて何とかなると侮っていたわ。」
「どんな問題が出たんだ?」
「銅と鉄の過熱色についてよ」
「加熱温度と色のグラデーションか」
「私の人生に加熱被膜が関わってくるとは思いもしなっかた。どうせ、塩漬けの教養になるだけだけど」
「人生どこで何が役立つか分からないぞ。錬金学なら俺の班のガッパーナが詳しいが」
「3小隊の3班のガッパーナね。今度、指導をおねがいしてみるわ」
「う~ん。ちょっと癖のある奴でね。」
「どんな風に?」
「”美”に対しての拘りが強い」
「私がブスに見えるタイプかしら」
「どうか分からないが、方向性は確実に違うと思う。」
「私、我慢強いから」
「だったら大丈夫か。何しろ先生が落第生じゃ恰好がつかない。」
「それじゃ、落第寸前の8名の最適な対策についてレポートをお願い」
「俺が教えるってことじゃないよな」
「違うわ。優秀な教師役候補と最適なマッチングについての分析・考察をお願い」
「ハイハイ、未来の教育長官さま。」
「あら、私の未来は”良妻賢母”よ。」
「はぁ~。オルレアの嫁ぎ先にレディ・メイドとしてついて行くんじゃないのか」
「オルレアの面倒は学院の卒業まで。卒業したら私は二十歳。年増と呼ばれようが婚活にはげむわ」
「それは、良縁をお祈りします。」
「何言ってんの。今から嫁を捜しまわっているあなたよりはましよ。」
「これは、恐れ入りました。マダム!」




