29 五月九日はナンジャモンジャの日
このひと月の間に、ナンジャモンジャの木の下の下草は適度に刈り入れられ、踏み固められている。
「アダン来てくれてありがとう。昨日送った報告読んでくれたかしら」
「簡単すぎて良く判らなかった。要はクレマが学校を開くという事か」
「まあ、そうなんだけど、それじゃつまらないというか、なんか違うような気して・・」
「それよりもクレマ、髪の色が変わったな。サン・ヤーマの所為か」
「そうなのアダン、亜麻色のくすみと茶色が抜けて黄色が残った感じかしら」
「雌黄か金糸雀色に近いか。それにオルレアも赤みが抜けてより軽やかな金髪になったようだ」
「でも、一番変わったのはクリスよ。一夜にして艶やかな栗色から薄緑青よ」
「変わらないのは僕だけか」
「あら、ルイも変わったわ。短髪だから判りづらいけど、単なる黒髪から漆黒ね。」
「アダンも判りづらいけどこれって、闇青よね」
「あの日の夜の行でほとんどが変化を受けたようだ」
「見た目が変わったのは10人程だというけど」
「外見まで変わったものは少ないが内面の変化を自覚しているものも多い」
「そんな折に中隊長がこんな注文を付けてくるなんて、意図的よね」
「クレマがいるという事が最大の原因だろうと思おうが」
「とに角、予備校的なものじゃなく中隊長をぎゃふんと言わせられるものにしたいのよ」
「ぎゃふんとは言わんだろうが、慌てふためくさまが見たいという点では同感だな」
「では、、みんなアイディアを頂戴」
・・・・・・・
「例えば地理学ね。ただ、地名と特産品を覚えるだけじゃなくてもっと積極的に興味を持ってもらうためにはどうしたらいいかしら」
「地理学は統治、農業、戦争の基礎になるが、それだけでなく土地の特性が物流や商業、職業、地域特性的文化といった博物学や社会学、それに植物学、地質学のような自然学と密接に関係を持つ。単に興味を持つというよりは、自分自身の興味に引き寄せて勉強してもらう工夫がいるな」
「それなら、自分の故郷について順番に語ってもうというのはどうかしら」
「でも、クレマ。みんながみんな人前で語れるとは限らないわ」
「そうねどうしたら面白い授業になるかしら」
「いっそ授業をやめてしまったら」
「どういう事」
「50人を食堂かなんかに集めて、一斉授業を行うのをやめてしまうの」
「それでどうするのオルレア。」
「そうね、聴きたいこと教えてほしいことを教えてくれる人の所に聞きに行くの」
「どうして?」
「だって、授業で知らない事を聞くのは我慢できても、知っていることを聞くのは辛いわ」
「それはそうだけど」
「だから、クレアがわたくしの家庭教師をしていた時みたいに、知りたいことを自分から質問した時にだけ教えてくれたみたいにするの」
「でも、クレマひとりじゃとても対応しきれないだろう」
「だから、ルイがクリスに教えて教えてって頼んだみたいに、剣の事なら、クリスに聞きに行くとか、女の子の口説き方ならアダンに聞きに行けるようにするの」
「オイオイ、俺はいつから女誑しになったんだ」
「そうか、自分の聞きたい事を教えてもらいたい人に教えてもらえるようにすればいいのね」
「オイオイ、俺は無視か」
「ちょっと難しいけど考えてみるわね」
「最後まで俺の事は無視か」
「それはそうよ、その黒髪とバリトンで囁かれたら、大抵の女の子はクラッとしちゃうもの」
「そういうものですか?だったらクレマさん達は大丈夫なのですか?」
「ルイ、心配ご無用よ。私達は大抵の女じゃございません」
「そう、最低の女よ」
「オルレア!」




