24 お風呂計画
導師、中隊長、シゲ班長とゆっくりと視線を動かしてから、クレマは話を続けた。
「まず、男子風呂にオルレア、女子風呂にベスをいれます。それぞれに4人の女子を付けて寄ってたかって30分で洗いあげます。次にロングヘアの女子をこの要領で洗いあげます。ここまでで一時間半。あと残り40人。30分で10人づつ仕上がっていくとして、2時間。15時半に女子終了。この後男子が二つの風呂を使って2交代で16時10分。最後の10人が終わるのは16時半。ギリギリ間に合う机上の計算です。」
「良く判らんが、計算に無理があったような気がするぞ」
「いえ、中隊長。同時並行作業を進行させますので辻褄はとりあえずあう事になっています。」
「そういうものか。」
「そういうものです。しかし、これはあくまでも机上の空論。欠陥理論、見落としがあります」
「それはなんだ」
「釜炊き能力の見落としです」
「釜炊き?」
「つまり、お湯が足らないという事です」
「洗髪に大量の湯を使うという事か」
「そうです。多分最初の5人ぐらい1時間で洗い湯がなくなります。」
「どんどん湯を沸かせばいいだろう」
「そうですが、湯が沸くには時間が掛かります」
「どうにかならんのか」
「解決策はある事はあるのですが」
「先にそれを言ったらどうだ」
「はい厨房の竈で湯を沸かしてそれを使います」
「ならば問題はないのでないか」
「いえ、些か湯沸かし能力に不安があります」
「どうする?」
「外で竈を作り予備とします」
「予備まで用意すれば万全ではないのか」
「いえ、中隊長。問題はそこではありません」
「何処がもんだいなのだ。」
「はい、風呂釜炊き、湯沸かし、水運びのほとんどを男子が担当する事になるからです」
「仕上がった女子が手伝えばいいだろう」
「私で洗い髪が乾くまで2時間。その後、灰や煤を被るような作業は出来ません」
「つまり、女子の為に男子に牛馬労をさせることになるという事を懸念するのか」
「そうよ、シゲ。男女平等に反しない?」
「命令なら従うしかないだろう」
「でもしこりは残るでしょ」
「う~ン、クレマの美しい髪のためなら頑張れるかな」
「シゲ班長」
「なんですか導師様」
「嘘の香りがしたような」
「導師様。嘘ではありません。世辞です」
「グレイゾーンですね。シゲさんは政治家志望ですか」
「軍専攻希望です」
「フーン、シゲ、本当はどうなの」
「本当はオルレアの美しさの為なら喜んで」
「これだから男は」
「いや、クレア。君の美しさについては衆人の一致するところだが、好みは別だ。それとこれとは別問題だ。」
「なんであのじゃじゃ馬がいいのか。“好きとキライは自分では決められない”というやつね」
「二人ともその辺にしておけ。で、何とかできそうか」
「はい、目どは立ちました。時間が欲しいのでこの辺で失礼してもよろしいでしょうか」
「いや、クレマ班長は今しばらく残ってくれ」
「そうですか・・。それでしたら中隊長、メモ用紙をお借りします。・・・シゲ、これをうちのウリに、それからリーダーシップを第1小隊のルイに取らせる事で、男子の班長連中をまとめてくれるかしら。それから、第3小隊のアダンに事情を話してルイの参謀についてくれるよう私が頼んでいたと伝えていただけるかしら」
「ルイは内規どうりで問題ないと思うが、なぜにアダンを引っ張り出す」
「ルイは15歳で世間知らず。アダンは男子の歳頭のはず、旅慣れていて世慣れているからルイにアドバイスができると思うの。」
「言われてみればそうだが、ルイはとも角アダンとは知己の関係でもあるのか?」
「そうね、私の美貌のなせる業ということで」
「まあ誰にでも特技の一つや二つあるという事か、導師、中隊長この辺で失礼します。」
三人は扉の閉まる音を待っていた。
伯山のグレーゾーン想像していたのと違ってました。




