22 ナンジャモンジャの木の下で・・・
四月の晴れた空に雲雀の聲が騒がしかった。
「クレア、ルイはクリスに師事するから秘密を打ち明けるのはしょうがないけど、アダンは?」
「オルレア。私は第5小隊、クリスは第1小隊なので、貴女にべったり出来ないのよ。日頃のお守りはアダン、あなたにお願いするわ」
「オイオイ、俺には俺の都合がある。お子様のお守りは勘弁してくれ」
「ごもっとも。だけどまあ乗り掛かった舟、同じ第3小隊にいるという事で気にかけておいて」
「仕方がない、見ているだけでいいなら。何かドジな事をしでかした時だけ報告するよ」
「それでお願いします」
「クレア、ちょっとそれはひどいじゃない!」
「それじゃべったりと、逐一見てもらいたいのかしら」
「そういうことじゃ・・・」
「ところで、ルイの剣術修行はどうするんだ」
「あの、それは、朝の瞑想の前に毎日少しづづ行おうと思います」
「瞑想の前にってそれじゃ3時起きか?」
「はい」
「ルイは、起きれるのか。それに、3時じゃ真っ暗だろう」
「それはルイの心がけ次第です。当分は基本練習なので特に灯かりはいりません。それに夜目遠目の訓練にもなります」
「まあ師匠がそう言うのなら大丈夫なのだろう」
「あの、私の事を師匠と呼ぶのはちょっと・・・弟子を取れる身分ではありませんので」
「でも、クリス殿ほどの使い手はこの中隊の中にはいないだろう。道場剣法ばかりの奴らばかりだからな」
「いえ決してそんなことは、・・各小隊に一人以上は使える方がいらっしゃいます。それぞれ得物が違うので比較できないだけです」
「そういうものか。クリス殿がそういうのならそういうものだろう」
「あの、アダン様。私に殿を付けられるのはご勘弁を」
「クリスさんいや、クリスも私をアダンと呼んでくれるならば改めよう」
「アダン様いえ、はい・・アダン、承知いたしました。」
「まだ固いな。ところで、ルイの練習は剣か槍か決まっているのか」
「アダンさ・・はい、ルイの剣術は我流で長所というか個性といえばそうなのですが、些かトリッキーです。慣れられると正統派の剣術には押し込まれてしまいます。かといって癖を消して新たに身に付けるとなると時間が掛かります。ですので癖は個性として、その上にというか、それを飲み込む基礎訓練をしたいと思います」
「というと具体的には」
「はい、剣にせよ刀あるいは槍に進むにしても基本は体術です。体術を兼ねて五業拳を基礎に置きたいと思います」
「ほうそれは、古風な」
「五業拳をご存じで」
「いや、名前だけだ。今様の多彩な拳法ではないのに感心した。」
「アダンさんは何か武術を」
「いや、特にこれといっては、旅が多かったので護身の真似事に犬払いを振り回す程度だ」
「そうですか、よろしかったらルイと一緒に稽古なさいますか」
「それは願ったりだな。」
「ルイ、良かったですね。弟弟子が出来て」
「ルイ、年上の弟弟子だがよろしく頼む」
「はッはい、こちらこそよろしくお願いします」
「クリスすごいわね。二人も弟子を持っちゃって」
「揶揄わないでくださいクレア様」
「クレアよ。ところで、お風呂の件だけどアダン、ジョグしながら聞かせて。そろそろ帰らなきゃオルレアの足じゃ食事に間に合わないから」
「クレアのいじわる!」