21 ナンジャモンジャの木の下で・・
大木の下草はキレイに刈り取られ、風が通り抜ける草原となっていた。五人は木陰に佇んで話し合っている。
「騎士たるもの貴婦人のお茶の相手ぐらいできなければ失格ね。女を敵に回すのは死活問題よ。ダンスは礼儀作法・立ち居振る舞いの基礎だから必須ね。」
「何処でいつ教えるかが問題です」
「そうねクリス。お茶は班長会議の時、時間を作ってお客としての飲み方ぐらいは何とかできるとして、ダンスよね」
「クレマが教えるのよね」
「そういう事になるわ。」
「楽走の時間ここで練習するのはどうかしら」
「当分はここに楽走の時間、集まって練習しましょ。練習パートナーはオルレアね」
「('Д')」
「オルレア、あきらめなさい。まずは身長。ヒールを履くとクリスの方がルイより高くなっちゃうし、オルレアも練習が必要でしょ」
「でも、クリスだって練習が必要です。」
「クリスは騎士爵よ。ドレスが正装でわないわ。剣を佩いたクリスにダンスを申し込む男なんていなわ。」
「それはどうかな」
「どういう事?アダン」
「帝国は男女平等だ。ダンスの申し込みも男女どちらからでも作法にかなっていれば認められる」
「・・・恋の鞘当てとは言うけれど、柄当て?」
「いや、そうではなく、ご令嬢がクリスにダンスを申し込む」
「ダンスの練習ならともかく、舞踏会や夜会で女同士で踊ってどうするの、ユリ百合しい」
「帝国は思想、信条、肌の色、耳の形、性癖で差別はしないというのが理念だが、そうではなく、単に男装の麗人に色めき立つ若い娘の心情くらいあんたにも分かるだろう」
「あんたって・・・って、まあいいわ。クリスには男性パートの練習も必要ということね」
「そういう事だ、備えあれば憂いなしと言うだろう」
「判ったわ。故郷では時間が無くて、充分にレッスンが出来なかったけど、クリスには仕事の一環としてと、花嫁修業としての両面からレッスンしてもらうわ」
「あの・・」
「なに、ルイ。はっきりおっしゃい。」
「仕事というのは・・・」
「ルイ、あなたはクリスの弟子にになるのよね」
「そうです。」
「それじゃ、私たち三人の秘密を教えるは」
「クレマ様それは!」
「いいのよ、クリス。ルイにも心得ておいてもらった方が今後のためにも。そうね、私達三人は見た通り幼馴染であることは事実だけど、学院入学に際して私達の領主様からそれぞれ役目を申し渡されているの」
「役目?」
「そう役職といってもいいわね。私は|侍女(Lady's maid)家庭教師も兼任ね。クリスは|護衛官(Escort)よ。そしてオルレアはじゃじゃ馬お嬢様」
「なによそれ、どうしてわたくしがじゃじゃ馬なの。どうみてもお嬢様、いいえここは|お姫様(Princess)といってよ」
「自分でいうのは勝手だけど、プリンセスカットならば誰でもお姫様とはいかないのよ」
「もう、クレマったらいじわる」
「という事で、ルイ、クリスにはご学友のほかに護衛の仕事があるの。心しておいてね。それに私にはオルレアのお守りの他にクリスの両親に頼まれてるのよ。」
「なにをですか」
「クリスを立派な花嫁にすること!あー、頭が痛いわ」
「それは、お気の毒」
「わらいごとじゃない!」
「じゃじゃ馬と剣術馬鹿・・・立派な騎士さまの出来上がりか」