19 4月21日(土) 第四週
週の真ん中、土の曜日の楽走の時間にクリス、クレマ、オルレアは雑木林の縁を回る人気のないコースを三人でおしゃべりしながら走るようになっていた。
「クレマ、クリス聞いて先週とうとう私も中隊長室に呼ばれたの」
「オルレア一人で?」
「もちろん違うわよ」
「第3小隊の誰と呼ばれたの」
「アダンよ」
「あの黒髪の、確か18歳だったかしら」
「姫様とアダン様とですか」
「オルレアとアダンね。クリス、フットマンのアンドレの身長は?」
「そうですね。六尺棒と同じだと言っていましたから180ちょっとでしょうか」
「アダンはアンドレより若干背が高そうね。」
「一回りとは言いませんが肩幅もあり、偉丈夫といって良い方です。」
「そうなると、オルレアとは30センチ程の身長差かしら。ダンスのパートナーには不向きね。クリスとなら何とかって感じね」
「クレマったら。どうせ私はチビですよ!」
「姫様、まだ身長は伸びます。あきらめる必要はありません。」
「なにョ、クリスまで。ダンスのパートナーを探しているわけじゃないのよ。それにここは軍隊よ。軍隊。」
「そうでした。それで姫様がお茶を淹れたんですか?」
「ううん。お茶は中隊長が淹れたわ。」
「「中隊長が??」」
「わたくしとアダンは座ってお茶を頂いて、おしゃべりをしてただけよ」
「それはそれは」
「なによそれ」
「いえ、お茶も淹れたことが無いようなお子様に見えたのか、それとも他に何かあるのかなと」
「クレマったら、何気にひどいんですけど、」
「気に障ったら失礼。それよりどんな話が出たの」
「ま~いろいろあったけど、それは些末なことで、一番大切なのは聖曜日に浴場を使って髪を洗っても良いという許可がでたことよ」
「湯を沸かしてお風呂に入れるっていう事?」
「そう。聖曜日は休養日だから。自分たちで自主運営できるならお風呂を使っても良いという使用許可を中隊長から頂きました~。」
「どうやって?ここは一応軍隊なんだから、自分たちの勝手には出来ないでしょ」
「それはね、学園生活を有益に快適に、軍隊だけど福利厚生については申請をだしてその妥当性を中隊長が認めれば許可が下りるという事がおしゃべりの中でわかって、とりあえず、ゆっくりとお風呂に入れないかな~と思ったらという訳なの」
「そんなに簡単に許可が下りるものなの」
「う~ン。細かいところはアダンが計画を立てて、前の聖曜日に第3小隊で実際行って、ってわたくしは自分の髪を洗うのに精一杯だったんですけど」
「それで、」
「それでって、えっとアダンの立てたお風呂計画を今週、第4小隊が検証実施して問題がなければ正式許可になる予定だけど。」
「うまくいきそうなの?」
「多分、班長達が引き継ぎを行うから大丈夫なはずだわ」
「そう。それは良かった。ナニ、その顔。何かあるの」
「(゜д゜)(。_。)ウン」
「なにヨ。」
「でもそれだと、牛馬労担当班しか入れないというか、ひと月に一回だけなのね」
「ロングヘアの悩ですね。ショートヘア組は毎日の清拭のついでになんとか髪を洗えますけど」
「まあ、一か月に一度だけでもありがたいんですけどね」
「できれば、隔週ぐらいには出来ないかなと思って」
「何かたくらんでる顔だ~」
「エヘッ。だから、クレマとアダンで何とか中隊長をぎゃふんと言わせる計画書を作ってほしいなと。」
「こんなことにぎゃふんはいらないでしょ。それに私はアダンと面識がないわ」
「そう言うと思って、アダンを呼び出しておいたわ」
「何処に?」
「ほら、あそこのナンジャモンジャの大木のところ」
「はあ~?」