18 続・続茶話会
自分の前に紅茶がサーブされると、オルレアは静かに人差し指の指頭でテーブルをそっと叩きながら導師に向かって語り掛ける。
「雨の日の外での作業は憂鬱です。」
「どうしてですか。」
「どうしても髪が濡れてしまって、乾かすのに時間が掛かります」
「オルレアさんは非常に髪が長いですから大変でしょう」
「六歳の時からずっと伸ばしているんです。」
と髪の毛の先をリボンで束ね腿の上に置いた髪の毛の上に掌をおいた。
「結婚するまで勝手に切ってはいけないと言われているんです。10年で膝の下まで伸びました。あと五年もしないうちに床を引きずって歩かなければならなくなります。」
「それは大変ですね。何か切ってはいけない理由があるのですか?」
「祭礼の時、巫女になるので。巫女の髪の毛は神聖だから切ってはいけないと言われました。」
「そうですか」
「そうなんです。学院では巫女にならなくていいので編み込んだり束ねて結ったりしていますが、今日は時間が無くてすべらかしたままで来てしまいました」
「とても奇麗な金色ですね」
「ありがとうございます。アッ、ダンケすればよかった」
「ハハハ、チャンスを逃しましたね」
「でも、手入れしないとすぐにくすんでしまうんです。タオルで拭いたり洗髪粉を使ったりしているんですが、最低でもひと月に一回はお湯で洗わないと臭くなったりして困るんです」
「そういえば腰ぐらいまでの長い髪の人は割といますね。どうしているんでしょうか」
「肩くらいの長さなら湯浴みの時に一緒に洗えるのですが、それ以上になると乾かすのに時間が掛かってしまい、湯洗いするのを我慢しているんです」
「そうですね。学生の場合、湯浴みと言っても汗を流す程度の時間しかありませんからね」
「私の場合は洗うのにも時間がかかりますが、乾かすのにも時間が掛かってしまい。あれこれ手入れもすると半日は掛かるんです」
「それはそれは」
「せめて聖曜日の休日に湯浴み所を使えればと願っているんですが」
「中隊長さん、その辺のところはどうなんですか」
「学院生活を送る上での様々な問題は、正式な申請を受けて責任者が許可を出すのですが、たぶん大丈夫だと思います。ここの責任者は中隊長の私ですので」
「オルレアさん、目がウルウルしていますよ」
とそこで、アダンが質問した。
「正式な申請と言われましたがどのようにすれば良いのでしょうか。」
「それは、直属の上司、ここでは小隊長に相談して下さい。様々な予想できる問題点の解決策を付けて許可申請となります。それを受けて中隊長、副官、小隊長の幹部が妥当性を検討して許可を出します。」
「それは、あらゆる事についてそうなのでしょうか。」
「そうです。入学時の説明会でもお話ししましたが、班や、班長会議でまとめて、時間がない時は直接小隊長に相談して下さい」
「判りました。ありがとうございます」
・・・・・・・
中隊長室を出て歩きながらオルレアがアダンに、
「美しさは武器になったかしら」
「あどけなさだと思うがな」
ぶっきらぼうに答えるアダンにオルレアはふくれっ面をしてみせてから、プンプンとおおまたで歩き始めた。
・・・・・
「中隊長、今年はオルレアでしたね。」
「私たちの時はいきなりの団体交渉でした」
「彼はどうしていますか」
「あいつは、今は法服めざしてがんばっています」
「そうですか、それはそれとして。まあ、オルレアが花火を打ち上げアダンが現実化するというコンビネーションですか、」
「面白い組み合わせですね。」
「期待しましょうか」
出張のため暫く休みます。