16 アダンとオルレアの茶話会
朝の三勤行が終わり第三小隊が牛馬労に向かうため練兵館の入り口を出たところで、第三小隊のキュリー小隊長が声を掛けた。
「3-3-13アダンと3-3-20オルレアは、この後、略礼装にて中隊長室に出頭せよ。他の者は課業を実行。」
・・・・・
すでに、中隊長室のドアの前にアダンは立っていた。オルレアは小走りに駆け寄ると
「遅れました」
と横に並んだ。
「髪が乱れています。整えて、」
とアダンが囁いた。オルレアが(('Д')何?、ちょっと遅れたくらい!)と髪の毛を撫でつける。
「美しさ、は武器だろ」
と、アダンは横を向くとオルレアの撥ねた髪を撫で始めた。
オルレアがいくぶん上気しながら、
「忝い」
「?」
「アッ。いえ、なんでもありません・・」
突然ドアが開き
「何をやっている」
其処には中隊長が立っていた。
・・・・・・
「3-3-13アダン学生、命令により出頭しました。」
「3-3-20オルレア学生同じくです。」
「なんだそれは、同じく出頭しましただろ。それに時間が掛かり過ぎだぞ」
「まあまあ、中隊長さんそれくらいに。お二人はこちらにお掛けなさい」
招き入れられた二人はアンシュアーサ導師とテーブルを挟んで直立した。
「掛けろと言われたんだからさっさと座りなさい」
と言いながら中隊長はワゴンに乗せられた茶入れを取り上げてお茶の用意を始めた。
三人は何事もないかのように話しを始める。
「学院生活はどうですか」
「と言われましても、始まったばかりです」
「あら、わたくしは大変楽しんでおります。」
「そうですか。オルレアさんはどんなところが楽しいのですか」
「みんなで同じ部屋に寝て一緒に体操したり走ったり、今は炊事をさせてもらってますがなかなか火が付かないんで助けてもらったりです。」
「そうですか、アダンさんはどうですか」
「水汲みは大変ですが、新兵訓練にしては思っていたのと違うと感じています。」
「そうですね、一般的な新兵訓練ではないですが、帝国の根幹を担う皆さんには必要な訓練だと思います。オルレアさんは水汲みは大変ですか。」
「わたくしは、体力がないので調理を担当することになりました。ので、水汲み、水運びはまだいたしたことがありません」
「そうですか、それは困りましたね。ここではあらゆることが“意味”を持ちます。朝はともかく昼の水汲みは他の人と同じにできなくとも、率先して参加してください」
「すいません」
「別に謝る必要はありません。あなたの率直な態度が皆を幸せにしています。何事も相談してください」
「ハイ、分かりました」
ちょうどその時、テーブルに紅茶が出された。導師がテーブルに置いた右手の拳の人差し指でトントントンと三度テーブルを叩打だした。
オルレアがそれを凝視し目を見開いた。
「お口が開いてます。どうぞ召し上がりなさい」
一瞬、頬に赤みが昇ったがそれよりも好奇心に負けたとばかりに
「あの、今、トントンって、しましたよね。トントンって」
他の三人は一瞬、訳が分からないといった感じで動きを止める。
「これですか」
暫くして何か思いあったとという風に導師が再びテーブルを人差し指でトン、トン、トンとゆっくり叩打してみせた。
「ハンドサインですよね」
〈〈〈???〉〉〉
間があった。
長くなりそうなので、稿を改めます。