15 四月十五日(土)膏霖
練兵館の板壁に背を持たれかけてクレマがクリスに囁く。
「流石に三日も降り続くと飽きるわね」
「オルレアは大丈夫でしょうか」
「第1小隊の10番系を水汲みから外す作戦をみんな引き継いでいるみたいだから、多分厨房にいると思おうわ」
「じゃ雨には濡れないで済んでいるんですね」
「そうだといいわね。」
「クレマ、これ第1小隊の名簿です」
「ありがとう、これは第5小隊のよ」
・・・・
「こうしてみると、学生番号には何らかの傾向がありそうね」
「はい、2小隊だけではまだ何とも言えませんが、05系統は他の小隊をみても、何と言ったらいいか不思議ちゃん?が当てられているような気がします」
「班長に年長者や経験者が振られているのは分かるけど」
「あと、A分隊はどちらかと言うと戦闘系と言うか肉体系というか」
「ガテン系ネ」
「帝国ではそう言うんですか」
「そうするとB分隊は技術系というか確かオタク系と言うそうよ」
「私はガテン系でクレマさーはオタク系ですか」
「そうね第5のBにちょっと変わった子がいるけど、戦士と言うよりは猫ね」
「ねこ?」
「まあ~、あなたはまだ知らなくていいわ」
「はい」
「とりあえず、他の小隊の隊員の名前と特技を調べるのが先ね」
「どうしたらいいでしょうか。詮索はマナー違反ですが、学生番号と名前だけはオープンですが」
「そうね、特に氏姓でいらぬトラブルを避ける配慮だろうけど」
「私の苗字はばれているけどね」
「帝国では聞かない苗字だそうです」
「だから、ある程度印象に残す意味合いもあるのだと思うわ」
「そうね、こういう時はナンパよ」
「ナンパ?ですか」
「そうよ、声を掛けてちょっとおしゃべりするの」
「無駄話は苦手で」
「何言ってるの、男どもとは普通に話しているんだから大丈夫、気軽に声を掛けるの」
「用もないのに女の子にですか」
「そう、三日も雨で楽走代わりに、この中で体操ばかりしてるのよ。きっかけさえあれば向こうからおしゃべりしてくれわ」
「そういうものでしょうか」
「クリスは女の子というものをわかってないわね。相手が話し始めたら余計なことを言わずにふんふんと相槌さえ言っていればいいのよ」
「ふんふんですか」
「時にはオウム返しに同じ言葉をいえばいいのよ」
「オウム返しの術ですか」
「そうよ」
「無駄に男前なんだから大丈夫」
「クレマさまどうなさるので」
「私は自分の美貌の使い方ぐらい知っているわ」
「はあ、確かにクレマさまはお美しいですが」
「十代の男なんか単純よ。取り敢えず班長クラスを軒並み撃沈して見せてあげるわ」
「二十代は違うのですか」
「その辺は今度じっくりね。貴族の戦いは剣より駆け引きよ」
「あっ。・・・」
「余計なことは言わなくてよろしくてよ」
「はい」
「第5は省いて、第3、は居ないと。ターゲットは1、2、4の6人ね」
「クレア様私はそんなにたくさんは」
「クリスは女の子の塊に突撃しなさい。戦果は後で」
「あのークレマ様、第1の01ルイについて相談しようと思っておりました」
「なに、特別な関係?」
「騎士道の指導をしてくれと頼まれていまして」
「?」
「軍人ではなく騎士に憧れていいるそうで」
「つまり、あなたの弟子になりたいという事ね」
「う~ん、端的に言えば」
「何処まであなたの事を知ってるの?」
「いえ、只、私が騎士爵持ちという事だけです」
「判ったは、今日は最後にルイと話してみる」
「よろしくお願いします」
「これは情報戦よ。では、戦闘開始。」。