11 中隊長室にて
中隊長室ではアンシュアーサ導師とアシリオ中隊長が雑談していた。
「アシリオさんは帝国学院の3年生でしたな。」
「はい、導師。74帝学軍事専攻です。」
「中隊長役とはずいぶん優秀なのですな」
「いえ、貧乏籤を引いたようなものです」
「謙遜もおできになるのですね」
「恐れ入ります。自分も通った道なので何とか仕事をこなしています」
「そうは言っても、中隊長さんが自ら号令を掛けるのは張り切り過ぎではないですか」
「・・・お恥ずかしいところをおみせ・・」
ドアがノックされた。
「3-1-01ルイ学生、命令により出頭しました。」
「同じく3-1-06クリス学生、出頭致しました」
「入れ。」
「二人を呼んだのは、導師様が二人と少しお話をしたいと申されたからだ。取り敢えずルイ学生、導師様に紅茶を差し上げてくれ」
ルイの挙動に二人の視線が注がれていた。ルイは気にする様子もなく茶器のワゴンに近寄り、紅茶を入れ導師と中隊長の座るテーブルにお茶を出し、シュガーポットの蓋を外して元の位置に戻った。
「ルイ君は貴族枠の推薦ですか?」
「そうです。」
「第1小隊の01番は曹長格のはず、普通は上等兵推薦枠の中から選ばれると聞いています。少なくとも17歳のはずだったと。ルイ君は15歳とか?」
「ルイ学生は、騎士爵位を今年、受爵しております。騎士見習いとして従軍経験もあり、昨年のヴィローマ紛争では銅の鬣勲章を授与されています」
「つまり、士官としの訓練を受けており、実戦の経験もあるという事ですか」
「因みに、クリス学生も騎士爵位を持っております。」
「成る程、女性で騎士爵とは美しさだけを評価されたわけではないという事ですな」
「騎士ともなれば従者を率いた経験もあります。01番が小隊長役や別働で小隊を離れた時に代理を務めるのは06番ですのでそれなりの者が当てられたものと思われます」
「人事局には他意はないと」
「そこまで、細かくは見れないでしょう。総合評価点と特性評価による自動振り分けでないと仕事が進みません」
「ルイ君、得意科目は何ですか?」
「はい。私は座学は不得意です。軍事専攻希望ですので武芸に少し自信があります」
「では、得物は何ですか?」
「はい。小盾片手剣です」
「馬上槍とかではないのですか」
「はい。私は育ちが複雑で馬は乗れるという程度です」
「成る程、簡潔にして正直な返答に感服しました。クリスさんはどうですか?」
「はい。私はこれっと言って得意不得意はありません。騎士として恥ずかしくない程度に一通り心得があるというほどです。」
「二人ともありがとうございました。ここでの会話は他言無用という事にお願いします。」
「では、二人とも帰ってよろしい」
退出しようする二人の背中に向かって導師が
「そうだ、クリスさん。折角ですからもう一杯お茶を入れてください」
と声を掛けた。