106 再会
デルミエス帝国の北の連峰山脈に繋がる山里がある。中山間部を東西に走る古い山道を十二野貫道と呼ぶことを知る人は少ない。単に山の道、北山道と呼ばれている。
オディ川の右岸から西へ、海までの道をミクニ山道とも呼ぶ。その中間あたりに真新しい切り妻屋根の小屋と東屋がある。
そこへ向け四頭立ての馬車と一頭立ての瀟洒な馬車とそれに引かれた1頭の乗用馬が向かっていた。途中、村人や三頭の騎馬とすれ違いながら先を急いでいた。
「正午にここでって、手紙に書いたのに、遅いわね」
「イラつくでない。そのうち来るのじゃ」
「いい加減、おじゃ姫に飽きないかしら」
「クレマ様、ウリは走っていきましたが大丈夫でしょうか」
「大丈夫よ、ウリは速歩程度なら一日中だって馬についていけるわ」
「それはすごいですね。私は2時間程で一杯ですね」
「クリスはフルプレートで、でしょ。それも考えられないわ」
「今から走り通せば夕方にはニームの港町に付けるから、明日から馬か船で移動でしょ。あっ、ウリは馬に乗れたかしら」
「それは、おいおい何とかなるでしょう」
「そうね、私達が心配することじゃないはね…あー、やっと来た」
・・・・・・・
「アンドレ、ラフォスご苦労です。」
「姫様、遅くなりました」
「クリスもお姫様なのか」
ルイが驚いた様子でつぶやくと
「そうなのじゃ、わらわたちは実家に帰ると皆、姫様なのじゃ。かーかっかっかっか」
「オルレア、やめなさいよもう、それに姫様じゃなくなってるし」
馬車の馭者席から大柄な男が二人下りて、トランクルームから荷物を取り出しクリスに渡す。クリスが荷物をもって客室に入ろうと扉に手をかけると中から扉が開き、突然一匹の灰色狼が飛び出してきた。
ルイはとっさに飛びさがり刀の柄に手をかけた。
「ルキアじゃ~」
と奇声を発し、オルレアが大きな狼の背に飛び乗る。続いてあどけない子供の狼が3匹顔を覗かせた。
「まあ!可愛い。どうしたの、ね、どうしたの」
クレマが走り寄って一頭を抱き上げる。男の子が現れ、残りの二頭を抱えて馬車をおりる。
「こいつら、馬車が始めたなので興奮してうれしょんするものだから遅れてしまいました」
「ラハト、ちゃんと喋れるよーになったの」
「クレマンティーヌさまじゃ無かった。クレマ様、お屋敷でだいぶ練習したんだ」
「しました。でしょ。」
「ハイ、しましたです」
「で、この子たちはどうしたの?」
「どうもこうもないだ。セシルの子だ」
「もしかして、セシルとルキアの…」
「何言ってんだ。ルキアとセシルは兄妹だ。あのデカいボス狼の子だ」
「そう~。ちょっと安心したけど、セシルあなた、私を差し置いて先に母になるなんて、足は大丈夫?」
「もうほとんど分からないくらいだぞ。」
「そう、それはよかったわ。ネー、名前は付けたの?」
「とっくにな、お屋敷の人たちとも相談しておいらが決めた。このちょっと首筋から背が黒いのがベオ、で、この子がロボ、ちょっと小さいけど濃い青のがセリだ」
「ベオにロボとセリね。三頭とも蒼色狼なのね。よろしくクレマよ」
子狼にメロメロのクレマにルイが語り掛ける
「クレマ、クリスの従者は3人と言っていたが、コーチマンとフットマンと子狼の世話係の子供か?」
「あっ、ごめん。紹介するね。こちらの大男が馭者のラフォス、薙刀使いよ。それからこっちのイケメンがアンドレ、従者、本物の従足よ。六尺棒使い。あと一人は」
その時、馬車の客室の扉が開いて、みんなが狼と戯れている間に着替えたクリスが下りてきた。編み上げブーツにズボン姿、つば広のハットを被り剣帯からはナイトソードを下げている。そして上半身はハーフプレートアーマーを着込んでいた。
午後のメイド服に白いメイド帽とウエストエプロンを付けた少女がクリスに続いて降りてくる。
「ルイ、この子がヴィリーよ。でも、クリス、この暑いのにプレートアーマーはどうかしら」
「クレマ様。今日から本格的な騎士の訓練です。まずはプレートアーマーになれることかと」
と言って、ルイに鎧櫃を渡した。
5タップー1をアップしてませんが、支障ないですネ。