4話 はじめてのスキルと魔物
アレフがいなくなってすぐに日は完全に落ち、今は月明かりが辺りを照らしている。
アレフによると夜になると魔物が出るそうなので、近くに落ちていた太い木の棒を拾う。これで倒せるかは不安だけどないよりはましだろう。
いつ魔物が出てきてもおかしくないこの状況では、戦う準備をしておかないとすぐに死んでしまうかもしれないしな。
アレフ曰わく、俺が死ぬことは無いらしいが怖いものは怖いのだ。それに油断は禁物っていうしな。
後は俺のスキルについて調べないと。
アレフから教わったことを思い出す。自分のスキルを確認するためには頭の中で念じる必要があるそうだが、決まったワードはないらしく漠然と願えば出るらしい。
漠然と願うって言われてもなー。
んースキル出てこい!
個体名 アウル・デイノス
種族 低位悪魔
ユニークスキル 「賢魔の知恵」
お、本当に出てきた。出てきたっていっても頭の中に浮かんでいるだけだけどね。
スキル以外にも色々出てきたが、レベルがあったり能力の数値化はされてないようだな。
詳しく知りたい箇所を念じると調べることができるようだ。
すぐにユニークスキルを調べたいどころだが、我慢してまずは上の種族から調べていく。
お楽しみは最後にとっておいた方がいいのだ。
低位悪魔 悪魔族の中で最も低位の存在
それだけか、それにしても、最も低位ってことは一番弱いってことなのかな?
これは先が思いやられるな。
あーダメダメ落ち込んだって仕方ない!切り替え大事に!
さてさて、次はお待ちかねのユニークスキル。
まずはユニークスキルがどんなものか調べよう。
ユニークスキル その個体特有のスキル。ノーマルスキル、レアスキルよりも性能が高い。
なるほどな。つまりユニークスキルはその人だけのスキルってことだな。
ノーマルスキルとレアスキルは浮かばないようだから、俺はまだ持ってないってことか。
続いては「賢魔の知恵」を調べてみよう。
賢魔の知恵 賢と魔を司る者に与えられる。
対象のスキルを視認、叉は攻撃された場合そのスキル保持者を
殺害する事でそのスキルを獲得可能になる。
尚、パッシブ効果のあるスキルは対象の殺害で獲得可能。
賢と魔を司る者に関しては俺が悪魔族であり、アレフに名付けてもらったことが原因だろう。
それにしてもなかなかどうして、かなりいいスキルではないだろうか。
本来なら獲得できないであろうスキルを得られる可能性があるからな。
パッシブ効果って発動しなくても常時効果があるスキルのことかな?
でも問題は殺害出来るかどうかだよな。魔物を殺せるかすら分からないし、ましてや人なんか殺せそうにない、殺さなきゃいけない状況にも出会いたくないしね。
これでも元人間だからな。まあ、ちょっと尻尾が生えてるだけで殆ど変わってないけどね。
今のままではナメクジ並みの強さしかないからとりあえず魔物を狩らなきゃな。できるかな?
ただ、このスキルの難点は敵のスキルを見るか、くらわないといけない所だ。
つまり後ろから不意打ちで倒しても何も得られないので、正面から戦いを挑みスキルを発動させつつ、倒さなければいけないってこと。
不意打ちで倒せるかも分からないのにとんでもない難易度だ。俺に出来るだろうか?
初めの内は苦労するかもしれないな。
そうやってスキルを調べていると、茂みが揺れた。
ザワザワ
なんだ!魔物か!?
ピョコ
なーんだ、ただの角が生えたウサギか。……ってイヤイヤイヤイヤ!なんで角生えてんねん!
明らかに魔物だ!
ギロッ
ヤバいよ!めっちゃこっち睨んでるよ!
角付きウサギが大きく踏み込むと未だ驚いている俺へと突進してくる。
イヤー、こっちきたー!助けてー!
こっから俺と角付きウサギの命がけの鬼ごっこが始まった。
必死に逃げ回る俺に、負けじとついてくる角付きウサギ。
時々、とんでもない勢いで突進してくる角付きウサギをなんとか避けようとするが角がかすって服が所々破れてしまった。
多分だけど、あれはスキルだと思う。であれば、スキルを見るという条件はクリアした。さて問題はどうやって倒すかだよなー。近づいたら確実にあの角の餌食になるだろうし、遠距離でちまちま攻撃するしかないかな。
「これでも食らえ!」
俺はとっさに振り返り、手に持っていた木の棒を角付きウサギにぶん投げる。
角付きウサギはいきなりのことに対応出来なかったのか、木の棒が直撃する。
よっしゃ!やったか?
ムクリ
ギャー、生きてる!さっきよりもなんか怒ってるよ!
角付きウサギさんは目を血走らせ俺への突進を再開してくる。
それでも先ほどのダメージがあるのか、動きが少し遅い。
よし、明らかに効いてるな。このまま投げ続けよう。
俺は逃げながらも石や木の棒を拾っては投げる、拾っては投げるを繰り返した。
「いい加減倒れろ!」
何度か俺の攻撃を食らい動きが遅くなった角付きウサギに渾身の一撃を放つ。
投げた石は角付きウサギの顔に直撃。
遂に角付きウサギはバタリと音を立てて倒れる。
《対象の殺害を確認、ノーマルスキル「突進」を獲得しました》
《投擲の熟練度を確認、ノーマルスキル「投擲」を獲得しました》
頭の中に声が流れる。
ハア…ハア… やっと倒せた。 案の定、スキルを使っていたみたいだな。
それにずっと石や木の棒を投げて攻撃していたせいか、「投擲」も獲得したみたい。
これは嬉しいな。
突進 突進の速度、威力が上がる。
投擲 物を投げる際に補正がかかる。
なるほど、「投擲」は強化の度合い次第だがなかなか使えるのではないだろうか。
「突進」は接近戦になったら重宝しそうだな。
するとまた角付きウサギが出てきた。
突進してきたが、今度は落ち着いて石を拾い距離を保ちながら投げる。俺の手から放たれた石は、吸い込まれるように角付きウサギに飛んでいき、直撃した角付きウサギは頭を爆発させて吹っ飛んだ。
わ~お、とんでもない威力だな。頭が爆発するって強すぎだろ!
とりあえず、これなら安定して遠距離で攻撃できるな。
ん?何かいるな。子供ぐらいの大きさで緑の肌、尖った耳に醜悪な顔で人型の魔物、初めて見たがゴブリンで間違いないだろう。
ゴブリンも気づいたのか、俺をみるなりこちらへ走ってくる。
「グギギ、グギャッ」
俺は急いで近くの石を拾い、投擲する。石はゴブリンに直撃して…ノックアウト。角付きウサギよりも距離があったせいか、爆発はしなかったが石が顔にめり込み地面に倒れる。
《対象の殺害を確認、ノーマルスキル「棒術」を獲得しました。》
あれ?ゴブリンには攻撃されてないが…… そうか!パッシブ効果のあるスキルは確認しなくても獲得できるんだった! スッカリ忘れていたな。
俺がスキルについて考えていると、後ろから別のゴブリンが出てきて俺に襲いかかってくる。
「なっ!あぶねっ!」
「グガガ!」
今のは危なかった。出てきたゴブリンは俺を仕留めきれず、悔しがっている。
するともう一匹ゴブリンが出てきた。
まじかよ、挟まれちゃったよ。どうしよ。
「おりゃ!」
まずは、一方のゴブリンに石を投擲する。今度は先ほどよりも距離が近かったため石が直撃したゴブリンは角付きウサギ同様、頭を爆発させドサリと倒れる。
「グギャギャッ!」
投擲した隙に、もう一方のゴブリンが俺に迫り棍棒を振り上げる。
今だ!
俺は「突進」を使いゴブリンにカウンターをする。不意を突かれたゴブリンはなんとか回避しようと持っていた棍棒で防ごうとするが、棍棒ごと後ろに吹っ飛ぶ。
吹っ飛んだゴブリンはなんとか生きているようで、よろめきながらも再び立ち上がる。
すかさず投擲の準備をするが、ゴブリンは逃げていってしまった。どうやら勝ち目はないと悟ったようだ。
別に追いかけたりはしない。戦意のない相手を殺すほど俺は悪魔ではないのだ。
俺は倒した方のゴブリンの持っていた棍棒を取る。それにしてもグロいな。自分がやったことだがやはりグロい。
それじゃ、「棒術」調べてみようかな。
棒術 棒の扱いに補正がかかる。
試しに棍棒で木を殴ってみる。
まるで長年使っていたかのような感覚で振ることができた。
バギボギ! ズドーン!!
いやいやいや!強すぎ! 木折れちゃったよ!
あ、棍棒壊れちゃった。
おかしいなー。ゴブリンの攻撃を実際にくらってないから分からないけど、こんなに強かったのか?振る速度もとんでもなかったし。
木の棒でも試してみたが、岩にひびが入った。
やっぱり強いな。
思えば「投擲」もだ。たった数十回投げただけであの性能のスキルを獲得できるなんて強すぎるのではないか?なんてったって、頭が爆発するほどの威力なのだ。それに精密性も上がった。
そういえばアレフが、スキルは魔力を基礎として使うものだって言ってたな。
俺の魔力総量は多いらしいから、そのせいだろうか。
まあ、強ければ強いほど安心なんだけどね。
しかし、この調子で魔物が出てくるとしたら、今夜は一睡もできそうにないな。
読んでくださってありがとうございます。
休校中は暇すぎ!
次回は新しいキャラの登場です。