3話 アレフさんは意外とすごいらしい
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まさか俺が異世界転生するなんてな。未だに信じがたい。
その手のラノベはよく読んでいたが、まさか自分が転生するとは思っても見なかった。
さて、これからどうしようか。
そうだなー、先ずは人がいる所を探すか。川沿いに行けばいつか見つかるかな?
俺みたいに、転生した人とかいるのだろうか?
いたら嬉しいな。
あ、でも俺もう人じゃないんだ。人じゃなくても街に入れるだろうか?
そう思いながら、川沿いを歩いていると再び森の中に入ってしまった。
遠くの空から何か飛んでくるのが見えた。
何だ、あれ?鳥?いや違うな。
人だ!人が空飛んでる!?
どうなってんだ!?
異世界に来てから初めて見つけた人だ。
ここで逃がす訳にはいかない!
俺は必死に手を振る。尻尾も一緒に振ってしまったのはご愛嬌だ。
「おーーーい!そこの空飛んでる人ー!」
お、気づいてくれた。こっちこっち。
空飛ぶ人は方向転換してまっすぐ俺に向かってくる。それも途轍もないスピードで。
ズドーーーーーーン
「うわ!」
そいつが降りてきた衝撃で地面にクレーターができる。モクモクと土が舞い上がり咳き込みそうだ。
土煙がおさまるとその犯人が出てくる。
「ケホッ、ケホッ、あちゃーやりすぎちゃったかな。大丈夫?」
そんな軽い言葉をいいながら出てきたのは、これまたなかなかの美青年で、雪のような白髪に、今の惨状を巻き起こした張本人とは思えないほどの華奢な体つきだ。
「は、はい大丈夫です!」
「ははっ、そんなに怯えないでよ。別にとって食ったりはしないさ。」
そうはいっても怯えてしまう。
足はガタガタ震えてるし、おしっこだって少しチビってしまった。
え?高校生なのに情けない?
仕方ないだろ!人が空から目の前に突っ込んできたんだぞ!
確かに呼んだのは俺だけど、こんなクレーターできるとは思わないだろ!
「それにしても、君みたいな低位悪魔がどうしてこんな所にいるんだい?」
どうしてっていわれてもこっちが聞きたいくらいなんだけどな。
それにしても、低位悪魔とは俺のことらしい。
俺は悪魔に生まれ変わってしまったのか。ちょっとショック。
「信じられないかもしれませんが、実は俺転生しちゃったらしいんですよ。それで何も分からないままどうしようかと思っていたところにあなたを見つけたんです。」
「へー、君転生者なんだ!それにしても悪魔族に転生なんて珍しいね。君、転生前は人だったでしょ。」
「はい、どうしてわかるんですか?」
「ふっ、僕ぐらいになるとそれぐらい朝飯前さ。」
うわっ、ドヤ顔うっざ。しかし、イケメンがドヤ顔しても様になるな。俺も今度真似してみよう。なんてったって今の俺はイケメンなのだ。
まあ、何よりあっさり信じてもらえて良かった。変に疑われても面倒くさいしな。
「お名前伺ってもいいですか?」
「ああ、僕はアレフ・マクロス。アレフでいいよ。君は?」
アレフ・マクロスか、カッコいい名前だな。
「俺は山岸 蛍です。」
「あー、ごめん言い方が悪かったね。そうじゃなくてこっちの世界の名前。」
「え、そんなのありませんよ?」
「でも君、低位悪魔だろ。名前がないと消えてしまうじゃないか。」
「マジですか?」
「マジさ。」
いや、初耳なんですけど。
「ヤバくないすか?」
「うん、やばいね。」
即答じゃねえか!
「ほら、君の手を見てごらん。消えかかってる。」
うわっほんとじゃん!もっと早く言ってくれよ!
ああ神様仏様アレフ様どうかお助けを!
「低位悪魔レベルは、受肉したとき名前がないと魂が定着しなくて消えてしまうんだよ。」
「俺はどうすればいいんですか!」
「どうするもなにも名前を付ければいいだけさ。」
「じゃあ名前付けてつけてください!」
「僕でいいのかい?」
「いいに決まってるじゃないですか!カッコいい名前にしてくださいよ!」
「そこは抜かりないんだね。」
当たり前だ、ダサい名前で異世界の人生を過ごしたい奴なんていない!
まずい、体がどんどん透けてくる。
せっかく転生したというのに、こんなに早く消えてたまるかよ!
「悪魔族にとって名前は重要なんだけどなー。そんな簡単に付けさせていいのかい?…まあいっか、僕に名前を付けてもらえるなんて君は幸運だよ。じゃあ、今から君の名前はアウル・デイノスだ。」
《賢王からの名付けを確認、対象の魂との定着……確認。ユニークスキル「賢魔の知恵」を獲得しました》
アレフさんがそう言うと俺の体は元に戻った。
危なかった。もし、アレフさんと出会っていなかったら、俺は消えていたかもしれない。
それにしても何だ今の声?賢王?ユニークスキル?「賢魔の知恵」を獲得?
一体どういうことだ。
「ありがとうございます。おかげで助かりました。それでアレフさん。名付けられたら直後何か声が聞こえたんですけど?」
俺はアレフさんに聞こえた言葉を話す。
「あーなるほどね。その声はスキルなんかを獲得したときに聞こえる「神の声」ってやつ。それと悪魔族にとって名前は重要なのはさっき言ったよね。もちろん魂を定着させるためってのもあるけど、それ以外にも理由があって名付け親によってその悪魔族の強さが大きく変わるんだよ。魂を定着させるのに必要って事は名前が魂に直で関係しているってこと。だから名付け親の影響も大きく受けるんだ。賢王とユニークスキルについては順を追って説明するよ。」
なるほど、「神の声」か…。てことは、神様はいるってことだろうか?
にしても話を聞く限り、名前ってかなり重要な要素じゃん。
その後アレフさんに詳しいことを聞いた。
まずこの世界には圧倒的な力を持つ六王なる存在がいて、
賢王 竜王 天王 精霊王 不死王 大魔王
この六人は寿命が無い者や転生の術をつかえたりなど、半永久的に生きていられるそうだ。
この話を聞いたときは、なんだそのチートの根元みたいな奴らはと思った。
不死王なんて名前からしていかにもだしな。
そして案の定アレフさんは賢王だったそうで、本気を出せば今いるこの森など簡単に消し飛ばせるらしい。
怖っ! これは異世界に来て早々とんでもない人に出会ってしまったな。
次にスキルの説明だ。まずスキルには種類があり、後天的な努力などで獲得できるもの。先天的にしか獲得できないもの。そして特殊な条件下で獲得できるものがあるらしい。
俺が獲得した「賢魔の知恵」は三つ目のものに当てはまるものだ。
このスキルの効果だが自分で調べることが出来るそうなので後で調べよう。
他にも色々聞いたがそれらは後々説明しよう。
そんなこんなでもう夕方になり空はオレンジ色に染まってきた。
話している家にアレフとはだいぶ打ち解けた。タメ口で話すくらいには。
「あ、そうそう夜になると、ここら辺にも魔物出るから気をつけて。」
「だよね~。」
やっぱりいるのかよ。そりゃスキルがあるくらいだからいるとは思っていたが…怖いな。
「ま、アウルなら多分大丈夫だろうけどね。」
「どうしてそう思うんだ?」
「アウルみたいに異世界から転生してくる人は一定数いるんだよ。その誰もが強力なスキルと莫大な魔力を持って転生する。普通は人が転生したら、また人に転生するんだ。
「やっぱり俺以外にも転生者はいるのか。ん?でも俺は低位悪魔とやらに転生してるぞ?」
「うん、その通り。その時点で君は異質なんだよ。それにきみの魔力はとんでもない量だよ。それこそ僕みたいな六王に匹敵するほどね。いくら転生者でもここまでの魔力を持ってるなんて有り得ないよ。まあ魔力総量だけじゃ、あまり意味ないけどね。でもその魔力ならこの辺の魔物相手に死ぬことは流石にないさ。」
そうなのか。しかし何で俺だけ悪魔族に転生したのだろうか?
そういえば起きる前、変な夢を見ていた気がするな。
「じゃあ、そろそろ僕は行くよ。」
「ん…ああ、分かった。ありがとな色々教えてくれて。」
「どういたしまして。それじゃっ、バイバーイ。」
アレフはそう言うと一瞬で空の彼方へと飛んでいった。
あ、もう見えなくなった。やっぱアレフヤバいわ。
読んでくださりありがとうございます。