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正気・Ⅰ
1
「やっと気がついた!」
とめい子が言った。
やっと気がついたみょん!ではなく。
そうだ。
本当は彼女はメイデンではなくめい子だし、語尾にみょんもつけないのだ。そもそもみょんってなんだよ。
全ては精神病院で見た、僕のまぼろしだ。
「やれやれ」
と僕は言った。
2
「あのアニメが原因だったみたい」
とめい子は言った。
「あの変なアニメ『ワールズエンドガーデン』を見た人は全員、気が狂って、『ワールズエンドガーデン』の世界へ行っちゃうの」
「作ったのは誰?」
「わからない。もともとは、ダークウェブに出回っていたみたい。MAD動画とか、今はどんどん削除されている」
「そいつはまだ捕まってないんだ」
「うん、手がかりは、『ワールズエンドガーデン』だけ」
「巧妙な手口だな。『ワールズエンドガーデン』を調べるためには、発狂しなければならない」
3
病室にバグが生じる。
「やばい狂ってきた」
「大丈夫。私が手を握っているよ」
めい子の声が拡散していく。
私が 手を
握ることによって
あなたは
ちょっとだけ
正気に
戻れるみょん。