正気・Ⅱ
1
僕はまた正気に戻った。
手を握ってくれている、めい子のおかげだ。
めい子に、『ワールズエンドガーデン』の話をする。
めい子は頷きながら、興味深そうに聞いてくれた。
さっき見た少年のことを話すと、
「それって、こんな顔だった?」
と、めい子がスケッチブックを出して、えんぴつで、サラサラと似顔絵を描き始めた。
「さすが美術部」
そう、少年はそんな、どこか悲しそうな表情をしていた。
2
「この精神病院には、他にも、『ワールズエンドガーデン』に行っちゃった患者たちが、たくさんいるんだけど、わたしのような、その人たちの付添人に話しかけてみたの、そしたら」
とめい子が言った。
「そこに共通点を見出した。誰でも幻覚の中に、見知らぬ少年が現れることがあるという。わたしはその話を手掛かりに、似顔絵を作った。みんな、この少年で間違いないという」
「じゃ、じゃあ、その少年は…」
「この事件に、大いに関係がある。わたしは、『ワールズエンドガーデン』を作った張本人だと睨んでいる。女の勘。なんのためかはわからないけれど、この少年は、みんなの世界を行き来しているんだわ」
「こんな小さな子が!」
「神童って、いるものよ」
だからね、あなたは、とめい子が言う。
せいぜい
どうぶつの森を
楽しむことね
そして寂しがり屋の少年をおびき寄せるの
それが
どうぶつの森を
ドラクエに変える
たったひとつの冴えたやり方みょん