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すでに見たことがあるものの組み合わせに過ぎない
1
人類は滅亡したのだから、ここに少年が立っていることはおかしい。
だとすれば、少年もまた、メイデンやトマトのように、「干渉」なのだろうか。
僕は少年に見覚えがないといけないはずだ。
フロイトの『夢判断』によれば、どんなに奇抜な夢でも、すでに見たことがあるものの組み合わせに過ぎない。
その理論をこの世界にも当てはめることが許されるならば、僕はこの少年が誰か、知っていなければならない。
僕はどうしてもこの少年のことが、思い出せなかった。
こういうのは、ある時ふっとわかるものだ。
少し目を離したすきに、少年は消えてしまった。
僕は釣竿を「干渉」で出し、しばらくメイデンと魚を釣ろうとしてみた。
魚などいないのだが。
2
僕たちが捨てた釣竿が、夕陽の方へ流されていく。