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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2016年
98/201

4月19日  百妖真璃絵

 大好きないおお姉ちゃんから炎を分けてもらった。炎があるだけで私はもっとずっと強くなれる。ただの骸ではなくなるから、たくさんの人のことを守れる。


 陽陰おういん大学はオフィス街と同じで町の端に位置する場所にあった。森から町へと溢れ出してくる妖怪を食い止める砦のような役割を私たちは必然的に背負っていて、ここを破られたらお終いだと本気で思っていたから命を懸けて守っていた。

 大学にいた《十八名家じゅうはちめいか》の人たちのおかげでみんなは避難できたみたいだけれど、誰かの──《十八名家》の人の亡骸が時々視界に入って心が乱れる。


 嫌よ、嫌。家族があんな目に遭うのは絶対に嫌。


 亡くなった人を悼む暇はなかった。ただ家族が、知っている人が、生きていてくれたら今はそれでいいと願っていた。

 そんな未来を実現させる為に私はここを守り続ける。化け物だと言われてもいい、これは誰かを守ることができる力。その力を持って生まれてきて、かけがえのない家族に出逢えた、そんな今が大好きだから心を捨てた。


 そうしたら、ただ妖怪を殺すだけの機械になれた。


 私はきっと、百鬼夜行が起きる前の私には戻れない。罪を背負い、罰を受け、そんな風に生きていくことしかできなくなる化け物になる。

 それはきっと、隣で戦っているいおお姉ちゃんもそうで。陽陰学園の生徒会として戦っているかなちゃんやれいちゃんやしいちゃんや朱亜しゅあちゃんもそうで。たった一人で戦っている麻露ましろお姉ちゃんもそうで。


 涙が溢れそうになった。餓者髑髏がしゃどくろの私には目玉がなくて骨しかなくて。だから血も流れないし涙も流れない。自分が今どんな感情なのかわからなくなる、心を捨てたのは──間違いだったかもしれない。


 助けて。


 誰にもそう言うことができなかった。


 溢れてくる妖怪を潰す。ずっとそうしていた。陽陰町は森に囲まれている町だから、私たちがオフィス街と陽陰大学を死守しても南側が突破されたら負けてしまう。

 南側には、陽陰学園があった。


『町民は皆、陽陰学園生徒会と《十八名家》の指示に従って地下に避難せよっ!』


 陽陰学園と思われる場所から放送を続けている彼はまだ生きている。大丈夫……本当に大丈夫?

 陽陰学園には結界が張ってある。そこが無視されていたら、そこを守っている誰かが倒れていたら、妖怪はもう──いいえ、ずっと前から町中に侵入していることになる。


 私の大きさでは町全体は見渡せない。

 何もわからない。


 尋ねても、それに答える声はどこにもない。

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