4月14日 間宮銀
「……なんだと?」
朝羽と朝日の報告に耳を疑う。険しそうな表情をしている朝羽と泣きじゃくっている朝日がわざわざ実家に帰ってきて報告してきたのは、朝日とその旦那である雅臣の離婚話だった。
「なんだその話は! ふざけるな、今すぐ雅臣を呼んでこい!」
雅臣は芦屋家の人間だ。結城家に嫁に行った朝羽と同じく、反対する者が少ない芦屋家に朝日が嫁に行ったのはかなりの奇跡だと思っている。
だが、千秋様同様私が雅臣に娘を嫁に貰ってくれと頼んだわけではないのに──何故そんな話になるのか。
「無理よ、お父さま」
「どういうことだ!」
何かを知っているらしい朝羽を問い詰めるが、朝羽は朝日を一瞥して「少し待って」と立ち上がった。
「待てるか! 今すぐ言え!」
「朝日を落ち着かせたいの!」
朝羽が私に刃向かったのは、朝羽が生まれて反抗期が終わってから初めてのことかもしれない。父親に対する態度としては受け入れ難いものであったが、朝羽は朝日を支えてさっさと部屋から出ていってしまった。
「遅い!」
戻ってきた朝羽は一瞬だけ怯んだが、逃げることなく座っていた座布団の上に戻る。腰を下ろし、「朝日には言わないでほしいんだけれど」と前置きをした。
「彼は妖怪のところに行ってしまったの」
朝日が何かやらかしたのかと思ったが、雅臣から何か話を聞いていたらしい朝羽の言葉がそれを否定する。
「妖怪? どういうことだ」
「最近妖怪が騒がしくしているらしくて、妖怪が陰陽師に危害を加えないように──そして、陰陽師が妖怪に危害を加えないように説得しに行くんだって」
「何をふざけたことを言っておる!」
「私もそう思うけれど、彼は芦屋の子よ?! 妖怪の声が聞こえるんだから、そう言っているあの子を止められるわけないじゃない! 止められないなら離婚を許すしかないじゃない! 雅臣がやったことでも、朝日が悪く言われるなら!」
間宮家は陰陽師の裏切り者の家だ。裏切ったのは千年前の先祖の男で、私たちはその男の直系ではなくても間宮の名を継いでいる時点で例外なく迫害されている。だから、私の子供がどちらも女であったこと──どちらも名家に嫁げたことはあり得ないくらい低い確率で起こった奇跡なのだ。そうして嫁にやった家の男が陰陽師が妖怪に危害を加えないように説得しに行くと言うならば、離婚を許した朝羽の判断は英断だっただろう。
雅臣を殺してでも止めることを法が許さないことだけが、唯一の最悪なことだった。




