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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
1023年
9/201

3月6日   タマ太郎

 オオきなケッカイがメのマエにある。だからマエにはススめない。


『クニナリ……?』


 このサキにいつもクニナリがいた。それでもマエにはススめない。


『ドウシテ……?』


 ──ドウシテ、アえない? アいたい。アいたい、クニナリにアいたい。なのにどうして、クニナリにアえない?


 いつものようにソラをトんだ。ウエからクニナリにアいにイこう。

 それでもクニナリにはアえない。クニナリといつもアっていたイエが、コワれていた。オりてクニナリをサガしたいのに、オりることさえケッカイのせいでできなかった。


 ──ドウシテ、ドウシテ。


 クニナリがイエのシタにいた。クニナリはまったくウゴかなかった。


 ──クニナリ、オきて。また、イッショにアソぼうよ。


 それでもクニナリはウゴかなかった。クニナリのナカにタマシイがないことをミトめなければならなかった。





「おまえは……。良かった、生きていたのか」


 ──ヤスミツ、ヤスミツ。


「どうした? 今日はやけに甘えてくるな」


 ──クニナリガ、イナイ。クニナリガ、キエタ。


「怖かったのか? 他の妖たちはどうしたんだ」


 ──イナイ。イナイ。ヤスミツ、クニナリが。


「まさか、おまえしか生き残らなかったのか? ……まぁ、おまえにしか話してなかったからな」


 ──ヤスミツ、クニナリが。


「すまなかった。悪いのはすべて人間だ、おまえたちは何も悪くない。すぐにおまえの仲間も増えるだろう、陰陽師おんみょうじは皆国の中心部へと向かったんだからな」


 ヤスミツにチカヨった。ヤスミツはセきコんだ。


「妖を全滅させて、奴らも少しは理解しただろうか……。ん? どうした」


 ヤスミツのイエをアルきマワる。そこでミつけたクニナリのフミをクワえてオとす。


「……国成くになりの身に何かあったのか?」


 フミをフんだ。


「何かってなんだ。八条はちじょうの地に何かが起こらない限り、あいつが死ぬなんてあり得な……まさか、八条に……?」


 ──ヤスミツ、クニナリがシんだ。クニナリが、シんだ。


「八条は確かこの国の中心にあったはずだ。八条に妖が集ったということか?」


 もうイチドフミをフんだ。ヤスミツはオイラのハナシをリカイした。


「八条に妖が集い、国成が死んだ……? そんな馬鹿なことがあるか。陰陽師は、妖だけでなく罪なき人まで殺してしまったと言うのか?」


 ヤスミツ、オイラ、カナしい。


「なんてことを……! げほっ、げほっ! 国成……っ!」


 ヤスミツ、もうイチド、クニナリにアいたい。

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