12月23日 睦見冬馬
馬鹿馬鹿しい命令を受け入れて、死ぬほど遠い町まで来て、死ぬほど痛い思いをして、それで得たものは一つもなかった。失ったものは数えきれないほどあって、それが自分にとってたいしたものではなかったとしても失ったという事実が腹立たしくて吠えたくなる。
任務に失敗した。組織での居場所をなくした。今の今まで刑務所にいたのだから金がない。こんなところでなくてもわざわざ迎えに来てくれる家族もいない。仕事をなくした。家をなくした。故郷をなくした。
釈放され、真冬の世界にたった一人で投げ出されて、どうやって生きていけというのだろう。あぁ寒い、殺す気か。すっかり冷えきった体のままではどこにもいけない。
世界の隅で丸まることは自分のプライドが許さなかった。のんびりと歩いて駅前まで行き、広場のベンチに座って成功者の雰囲気を出す。
……あぁ、駄目だ。このままだったら自分自身もなくしてしまう。
瞳を閉じた。凍てつくような寒さの中、ベンチで眠ろうとする男に差し出される手はあるのだろうか。
そんなものはない。瞳の奥にあるのはただの闇。その中にたった一人だけ灯った炬火を見つめていた。
それを掴めば逝けるのだろうか。いや、あれは──。
『知らねぇのか? 武器を持ってる人間はだいたい雑魚キャラなんだぜ』
あれは、俺の心の中に眠っていた怒りだ。あの瞬間を思い出す度に腹が立って仕方がなかった。
「……炎竜神、炬」
奴の名を口に出す。瞳を開けると、周囲の人間がぎょっとした表情で俺のことを見つめていた。
奴はどれほど悪い方面での有名人なのだろう。一番近くにいた冴えないサラリーマンの首根っこを掴み、炬の居場所を吐き出させる。
待っていろ、炬。俺はお前のもとに行く。その後どうするのかは決めていなかった。とにかく一目でもいいから会いたかった。
『おれっ! おれの名前は嘉志摩遥! 十五歳! 炬さんの〝部下〟になりたいっす!』
胸の中に渦巻いているこの感情は、本当に怒りだったのだろうか。建物の外からその言葉を聞いた時、目頭が熱くなったような気がして戸惑う。
俺には何もない。最初から何もなかった。すべてを持っているあの男のことが羨ましくて羨ましくて仕方がなかった。
炬火を掴んだら体温を取り戻すことができるのだろうか。普通の人間になりたいわけではない、もう戻れないと知っている、ならば──ならば、あいつと一緒に生きていくのは悪い話ではない気がする。
なぁ、俺も混ぜてくれよ。




