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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2014年
86/201

12月23日 嘉志摩遥

「卒業したらさっさと出てけ!」


 気づいたら家を飛び出していた。おれは裸足で走っていた。生きる為ならなんでもすると思った、こんなところで死にたくなかった。

 おれの人生はクソなんかじゃない。おれは幸せになるんだ。その為には力が必要なんだ。おれはまだ弱い。あの光のような炎みたいに、あの人みたいに、なりたいから、止まらない。


 親は追いかけてこなかった。

 おれはずっと一人だった。


 気づいたらあの人のナワバリの雑居ビル地区にいた。生きていく為に必要だったのは力よりも金だったけど、金を持っている奴はいそうにない。

 諦めてしまいそうだった。それでも家には帰れないから、大通りに蹲っていた。


「若、何故このようなところに?」


「テキジョーシサツだよ! ボクは相豆院そうまいん家で一番偉いんだよ?! それの何が悪いのさ!」


「ですが、まだ次期頭首が若と決まったわけでは……」


「は?! 頭首は鬼一郎きいちろうでしょ?! 何言ってんのか意味わかんない!」


 信じられないような会話を聞いて顔を上げる。大人を連れて歩いているおれよりも年下そうな子供が、相豆院家……?


 上手く言えないけど、吐き気がした。そいつらから目が離せなくて、子供がこっそりと路地裏に入ったところもちゃんと見ていた。


「おい」


「ッ?! な、何アンタ。話しかけないでくれる? 汚ったない野良犬と一緒にいるところ見られたくないし」


「……は?」


「だから、話しかけないでって……」


「ッ、聞こえなかった! そんなことより金くれよ!」


「は?! 意味わかんない! あげないし!」


「いいだろ別に! 持ってんだろいっぱい!」


「持ってるけど今ないし! アンタみたいなのにあげるお金もないし! ほんとに近づかないで、バカと貧乏がうつっちゃうから!」


 気づいたらまた走ってた。拳を握り締めて、この──おれよりも弱くてちっちゃな子供を殴って、それで、金を。


「ぎゃっ?!」


 そう思ったけど、殴れなかった。こいつを殴ったら、おれは、おれの親みたいになる。そんなのは死んでも嫌だった。


「……? ……?」


 子供はおれを見上げ、その場にぺたりと尻をつける。逃げたのはおれの方だった。


 どうしよう。どうしよう。どうすればいい?


 大好きなあの人ならどうするんだろう。弱い奴から金を奪うのは親のやり方だから、あの人のやり方を真似しよう。


 かがりさん。おれは炬さんみたいに強くなりたいから。だから、炬さんならどうする? 教えて。


 足が絡まって地面に倒れた。このまま死ぬのは嫌だと思った。

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