12月23日 嘉志摩遥
「卒業したらさっさと出てけ!」
気づいたら家を飛び出していた。おれは裸足で走っていた。生きる為ならなんでもすると思った、こんなところで死にたくなかった。
おれの人生はクソなんかじゃない。おれは幸せになるんだ。その為には力が必要なんだ。おれはまだ弱い。あの光のような炎みたいに、あの人みたいに、なりたいから、止まらない。
親は追いかけてこなかった。
おれはずっと一人だった。
気づいたらあの人のナワバリの雑居ビル地区にいた。生きていく為に必要だったのは力よりも金だったけど、金を持っている奴はいそうにない。
諦めてしまいそうだった。それでも家には帰れないから、大通りに蹲っていた。
「若、何故このようなところに?」
「テキジョーシサツだよ! ボクは相豆院家で一番偉いんだよ?! それの何が悪いのさ!」
「ですが、まだ次期頭首が若と決まったわけでは……」
「は?! 頭首は鬼一郎でしょ?! 何言ってんのか意味わかんない!」
信じられないような会話を聞いて顔を上げる。大人を連れて歩いているおれよりも年下そうな子供が、相豆院家……?
上手く言えないけど、吐き気がした。そいつらから目が離せなくて、子供がこっそりと路地裏に入ったところもちゃんと見ていた。
「おい」
「ッ?! な、何アンタ。話しかけないでくれる? 汚ったない野良犬と一緒にいるところ見られたくないし」
「……は?」
「だから、話しかけないでって……」
「ッ、聞こえなかった! そんなことより金くれよ!」
「は?! 意味わかんない! あげないし!」
「いいだろ別に! 持ってんだろいっぱい!」
「持ってるけど今ないし! アンタみたいなのにあげるお金もないし! ほんとに近づかないで、バカと貧乏がうつっちゃうから!」
気づいたらまた走ってた。拳を握り締めて、この──おれよりも弱くてちっちゃな子供を殴って、それで、金を。
「ぎゃっ?!」
そう思ったけど、殴れなかった。こいつを殴ったら、おれは、おれの親みたいになる。そんなのは死んでも嫌だった。
「……? ……?」
子供はおれを見上げ、その場にぺたりと尻をつける。逃げたのはおれの方だった。
どうしよう。どうしよう。どうすればいい?
大好きなあの人ならどうするんだろう。弱い奴から金を奪うのは親のやり方だから、あの人のやり方を真似しよう。
炬さん。おれは炬さんみたいに強くなりたいから。だから、炬さんならどうする? 教えて。
足が絡まって地面に倒れた。このまま死ぬのは嫌だと思った。




