8月23日 弥上集
物心ついた時から、父親が商売をしていることは知っていた。だが、何を扱っているのかは知らなかった。
故郷から遠く離れたイタリア。島国ではないが島国のようにほとんどが海に囲まれた国。
「えっ、なんで?!」
「お前も来月で十七だろ? だからそろそろ父さんの仕事を手伝わせようかと」
「えぇ〜やだよ興味ね〜よ〜」
「なんでだよ! 今までやって来た商売をリアルでできるんだぞ?!」
商売をしているのだと知ったのは、同時に父親から商売の仕方を叩き込まれたからだ。
商売自体は楽しかったが、この年で仕事をしようとは思わない。なのに父親はやる気で断り切れなかった。
「ぐぇぐぇわかった! わかったよ! やるよ!」
襟首を引っ張られたままついて行く。父親はやると決めたら絶対にやる。それは商売を叩き込まれた時もそうだったから。
「で? その商品は? どこにあんだよ」
「武器庫だなぁ」
「え? あぁ、武器庫ね、武器庫」
「今日は新商品が出たからそれを無料で押しつけに行くんだ。ほら行くぞー」
「は?! タダで?! なんでだよ!」
「使い心地を試してもらわねぇと絶対に買ってもらねぇんだよな〜。良かったらリピートしてくれてガッポガッポに儲かるから、それの時になったらめちゃくちゃにとってやんのよ!」
「なんだそれ! 怖ぇー! タダより怖いモンはねぇってヤツか!」
「ん? そうなのか? よくわからん!」
「俺もわからん!」
「わかんねぇ言葉を使うな!」
ゲンコツで頭を殴られた。父親の怒るポイントがわからないせいで大体毎日殴られてしまうが、もう痛くない。もう慣れた。
「で? その新商品は?」
「これよこれ」
「あぁ、それはこっちにあんのか……」
「そうそうこの拳銃」
「拳銃……拳銃?!」
「何をそんなに驚いてんだよ。俺と違ってイタリア育ちならびっくりするモンじゃないだろ?」
「いやっ、父さんがそれを扱ってることにびっくりしてんだよ!」
「え? そうなの?」
拳銃の取り引きをしている時、あまりにもあっさりと終了したことも──相手の身体中に傷があったことも気になって。父親の武器庫に足を運んだ瞬間に、納得する。
「父さん、これさぁ」
歴史の授業で見かけたことがあるような、そんな武器が数々並んでいた。
「凄いだろ! 俺はなんでも揃えている〝武器商人〟だからな!」
──そいつのことを〝死の商人〟と呼ぶことも、知っている。
ただ、男心を擽るそれの数々に心奪われたのも確かだった。大儲けした時に感動したのも、確かだった。




