5月6日 骸路成栄子
昨日亡くなったのは、私の妹とその旦那だった。
二人が同時に亡くなった理由は事故。詳しいことは聞いていないけれど、病院に運ばれた時には既に亡くなっていたらしい。
──二人の遺体は、生きている方がおかしいと思うほどに傷ついていた。
悲しいか、と聞かれたら私は返答に困ってしまう。だって私は妹と暮らしたことが一度もないから。十一歳も歳が離れているから、赤の他人同然だと思って生きていた。
なのに血は繋がっているから、無視できないことがある。
「…………」
私の目の前で泣いているのは、妹──翔子の娘のアイラだった。アイラは驚くくらいに翔子に似ていて、驚くくらいに翔子の旦那のアランに似ていない。ただ、ハーフだとわかる顔立ちをしているとは思った。
アイラを見ていると、どれほど《十八名家》の血が強いのかを嫌というほどに思い知らされる。
アランは陽陰町出身でもなければ日本人でもない男だから、アイラが顔立ち程度でしかアランに似なかったのが恐ろしかった。あんなにも強く見た目に《十八名家》の特徴が現れてしまうから、《十八名家》がアランの血が混じるのを嫌がったことにあまり意味はなかったかのように思える。
ただ、翔子とアランが《十八名家》に殺されたのは、《十八名家》の因習──町と人を守る為に《十八名家》が命を擲つことに関して反対の意を示したからだった。
あんなことを言わなければ、あんな風に消されなかっただろうに。大切な娘であろうアイラを遺して死ぬことはなかったのに。
「栄子、よく来たね」
私に声をかけたのは、綿之瀬家の五道さんだった。
ここは綿之瀬家が運営している養護施設。五道さんはその施設長らしい。五道さんは乙梅さんの実弟だ。乙梅さんは私と同じ《十八名家》の現頭首、五道さんはその弟なのに分家に任せずこんな仕事をしている不思議な人だ。
「アイラをよろしくお願いします」
「そんなことを言っていいのかな?」
アイラは《十八名家》を敵に回した二人の娘だ。アランの血が混じっている彼女の生存でさえ許そうとしなかった《十八名家》が半数ほどいたのは記憶に新しい。ただ、なんの罪もなければ《十八名家》を脅かす者でもないアイラの命まで奪うのは許さないと──反対の意を示した《十八名家》も半数いたのだ。だからアイラは生きている。そんなアイラの生存を、翔子の姉である私は公の場で望むことはできない。
「ここだけの話にしてください」
愛することもできなかった。




