5月5日 骸路成翔子
アランさんが運転する車に乗り、《十八名家》の本部がある北へと向かう。
「お義母様、今日は理解してくださるでしょうか」
「想いを伝え続ければ、いつかきっと理解してくださいますわ。わたくしたちのことも、アイラのことも」
「ショウコ……」
「だって、アランさんは誰よりも素敵な殿方なんですもの!」
「……ショウコも素敵な心を持った人です。私は昔修道女たちに育てられていましたが、彼女たちよりもショウコの方が綺麗で眩しいです」
「うふふっ、嬉しいですわ! わたくし、アランさんの褒め上手なところも好きなのよ!」
出逢って、婚姻関係を結んで、六年が経った。あの日から喜びも悲しみもたくさんあったけれど、わたくしは今が幸福だから悲しみを数えて涙を流すことはしない。
《十八名家》が彼を受け入れることが難しいことは、話を聞いて理解できた。愛しの娘アイラに妖怪の血と人間の血と国外の人間の血が入っていることは良くないことなのかもしれない。
それでも、人間は様々な血が混じりあって子孫を残していくものだと思うから、認めてほしいと思う。
「私もです。本当に、生きていて良かったです」
『生きていたらきっと、いいことがあります』
妖怪の存在を知ってしまった日の帰りに、彼はそう言った。その日から時々そう言ってくれて、それが彼の口癖なのだとわたくしは知る。
すぐに一緒になったから、わたくしの知らない彼がたくさん存在していて。そんな彼をもっと知りたいと願って。これからも生きていこうと決意して。
爆発音と共に車が宙に浮かび上がった。痛みが全身に走って残る。血が吹き出した、どこから? わたくしとアランさんからだ。
「──ッ?!」
横転した。炎が上がっている。出られない? アランさんは?
「い、や」
運転席のアランさんは、動かなかった。
『恥を知りなさい。わたくしたちは死ぬ為に──この町と人々を守って死ぬ為に生まれてきたのですよ? 生きたいだなんてそんなのわたくしが許しません。貴方はわたくしの娘じゃない!』
わたくしは、何を言われてもお母様のことを愛していた。お姉様のことも愛していた。いつか理解してくれると信じていた。
わたくしの愛は伝わらなかったのだろうか。お母様にもお姉様にも死んでほしくなかったわたくしの愛は。
ただ生きてほしいと願う。愛の名をつけた娘のアイラにも。お母様にもお姉様にも。《十八名家》のあの人たちにも。
死んでいい人なんてこの世界にはいないのだから。




