9月28日 綿之瀬有愛
パパとママと手を繋いで、オウインチョウの駅のホームに下りる。初めてのニッポン。初めてのオウインチョウ。
私はずっとわくわくしていた。お城から出ることができたから、例え行く先がオウインチョウだとしても嬉しかった。
「ホテルに荷物を置いたら施設に行くのよね?」
「あぁ。急ごう、予定より少し遅れている」
改札を出て駅の裏側に回ると、高架下が見える。そこを潜って姿を現したのは大きくて綺麗な高級ホテルだった。
「わぁ……!」
キラキラと輝いている。嬉しい。幸せだ。今日はなんて素敵な日なんだろう。
ホテルのロビーもキラキラしていて新しい。映画に出てくるような古いお城で暮らしているから、お姫様が暮らしているようなところに来た気がしてニコニコと笑う。
「行きましょう」
チェックインしてエレベーターを使った。五階で下りて、赤い絨毯が敷かれた廊下を歩く。
「凄いわねぇ。田舎のホテルなのに」
「ここに泊まるのは外部の重鎮がほとんどらしいからね」
オウインチョウのどこかの王族の一人のパパは、オウインチョウのことをよく知っていた。ママと私は、まだ何も知らなかった。
「それが私たち、ということなのね……。ねぇ、貴方、本当にコーデリアをあの人たちに渡すの?」
「コーデリアにしか《十八名家》の血が流れていないからね。力が発現するかどうかの実験はこちらでしかできないし」
「わかるけれど、それでこの子をあの人たちに盗られるのは嫌よ。この子は私たちのものなんだから」
「盗られはしないさ。そういう契約だからね」
ママは「だといいけれど」と呟いた。私は、言葉の意味がわからない振りをした。
瞬間に爆発音が響く。視界の端が真っ赤に染まって、パパとママもいるそっちを見たら赤い炎が迫ってきていた。
「ぎゃっ!?」
熱風が全身を包み込む。また爆発音がした。真っ黒な煙が廊下を黒にする。
息を吸い込んだ。苦しい。痛い。熱い。吸っちゃダメだ。けど。
「パパ……! ママ……!」
叫んだ。喉が痛かったから小さな声になってしまった。
パパとママがどこにいるのかは見えない。ちょっとしか経ってないのにどこかに行ってしまった。
「コーデリア……。逃げて……」
聞こえてきたのはそんな声。煙を掻き分けると瓦礫が見える。
「……?!」
その瓦礫に触れようとした。瞬間にその手を誰かに引っ張られた。
「やだ……」
痛い。
「やだってばぁあぁぁあぁ!」
痛い。
煙と炎がすべてを奪った。何がなんだかわからなかった。




