6月22日 炎竜神恵
生徒会長は百妖依檻。一個下に妹の真璃絵がいて、そいつが副会長をやっている。私は生徒会の一員としてその二人と毎日のように顔を合わせていたけれど、適性があるようには見えないのにどうして百妖姉妹がその地位に指名されるのかわからなかった。
「恵ちゃ〜ん、なんでついてくるのよ〜」
振り返って表情を緩める依檻を無視する。生徒会室を抜け出した依檻は三年生の教室を目指していて、また、姉である元生徒会長の麻露のことを探していた。
「別にサボってるわけじゃないからさぁ〜」
「仕事を妹に押しつけてるくせによく言うな、お前」
「おっ、押しつけてないわよ?! お願いしてるの、お願い」
「は?」
意味がわからない。本当になんでこんな奴が生徒会長なんだろう、親の七光りが強すぎる。
「恵ちゃん辛辣ぅ〜……違うの本当にわかんないとこをシロ姉に聞くだけだから〜」
「そんなことをしているのは歴代でお前だけだって聞いたけどな」
「うぅ……あ」
「あ」
私の方を見ていた依檻がぶつかったのは、炬──私の従兄だった。
「炬、さん」
珍しく戸惑う依檻はそんなに炬のことが怖いのか。いや、去年生徒会として一緒だったのだから今さら怖いはないだろう──色々と考えて依檻の様子をもう一度よく見る。
「ちょちょちょ炬さ〜ん! シロ姉探してるのどこか知らない?!」
固まったのは一瞬だった。依檻は立ち去ろうとする炬のブレザーを無理矢理引っ張り、引き止める。
「知らねぇ」
「なんでよ炬さんシロ姉と同じクラスじゃ〜ん!」
「知らねぇ」
「じゃあ一緒に探してよ〜!」
依檻の燃えあがるようなオレンジ色の髪がそいつの動きと一緒に揺れた。依檻はその勢いで炬の夕焼け色の髪を乱そうとし、その行動力と勇気に驚く。
私と炬の家である炎竜神家は、裏社会を支配する家だった。私も炬も組にがっつりと関わっていて、友人と呼べるような人間は一般人にも同じ《十八名家》にもいない。
家族仲が良いわけでもなく、家族や生徒会の仲間よりも炬との距離を詰めることができる依檻はどういう神経をしているのだと思う。
いや、それは──。
不意にこっちを見た依檻は、笑顔で手招きをする。
「恵ちゃんこっち! 電車ごっこでシロ姉のことに行くわよ!」
それは、私にも当てはまっていた。銃を扱う私の手を取り、自分のブレザーを握らせて炬を走らせる。
「出発進行〜!」
私は依檻のことが好きじゃない。それでも、私にとって唯一無二の存在であることは間違いなかった。




