4月22日 妖目明日菜
わたしのお母さんは病院の一番偉い人。わたしの家族はお医者さん。だからわたしも、お医者さんになる。
お医者さんになるのは簡単じゃないから、わたしは休み時間になっても勉強していた。小学一年生の勉強は幼稚園の頃にやったから、二年生の勉強をしてた。
みんなは外に遊びに行ったから、とても静か。なのに誰かがくしゃみをした。
あれ? って思って顔を上げると、一番前の席に男の子が座っていた。あれは芦屋くんだ。お母さんが芦屋くんのお母さんと友達だから知っている。
芦屋くんも、友達と遊びに行かずに椅子に座って何かをしていた。
何をしているんだろう。なんで一人なんだろう。知らない人じゃないから話しかけてみたくなって、立ち上がる。
「どうして一人なの?」
芦屋くんが顔を上げた。
「え?」
芦屋くんは驚いてわたしを見ていた。
「友達は? 何してるの?」
「えっと……勉強してるの」
けれど、芦屋くんがしているのは勉強じゃなくて読書だ。この子は嘘をついている。なのに難しい文字がいっぱい書いてあって、わたしがいつも読んでいる本じゃないことはすぐにわかった。お母さんが読んでいるような〝いがくしょ〟みたいなものだと思って、じゃあやっぱり勉強なんだと思って、芦屋くんのことを知りたいって思う。
「どうして?」
気になって気になって仕方がなかった。ずっとわたし一人だけだと思っていたから、同じことをしている芦屋くんに気づいて嬉しくなったのかもしれない。
「大切なものを守りたいから勉強しているの」
「友達と遊ばないの?」
「トモダチと遊ぶ時間はないから、一人になっちゃうのはしょうがないよね」
「…………」
そう。しょうがない。夢を叶える為だから。友達と遊ぶ時間はもったいないから。だから一人で夢に向かって走ってる。
でも、今のわたしと芦屋くんは一人じゃなかった。
わたしと芦屋くんは同じなんだ。同じ人がいてすごく嬉しい、わたしは芦屋くんと友達になりたい。
「将来の夢は?」
お医者さん、そう言ってほしかったけれど──
「えぇっと……ヒーローかな」
──芦屋くんはそう言った。
「ヒーロー?」
何それ。変なの。一気に嬉しいが消えていく。
「うん。町を守るヒーローになりたいんだ」
けれど、その顔はヒーローに憧れる子の顔じゃなかった。苦しそう、なのに頑張ってる。
わたしもちょっと苦しかった。けれど、芦屋くんと同じならまだ頑張れる。
「そっか」
わたしは笑った。芦屋くん──結希くんも笑ってた。




